イチジクは、漢字で「無花果」と書き、花が咲かないと言われていますが、実は、果実の内側に花が咲いているということを知っていましたか?面白い特徴を持ち、ジャムにして食べても美味しいイチジクの育て方について紹介します。
イチジクとは?
イチジクは、旧約聖書にもアダムとイブが食べた「知恵の実」として出てくるほど歴史が古く、遠い昔から栽培されていました。イチジクは、クワ科の植物で、実の内側に花が咲くため、受粉は、「イチジクコバチ」という種類のハチが実の中に入ることで行われます。
イチジクには雄株と雌株があり、本来は両方を植えるのですが、受粉していなくても結実するので、雌株さえ植えれば、イチジクの実を収穫することが出来ます。
このことから、日本で流通しているイチジクは、受粉していないものも多く、また受粉しなくても甘い実ができるように品種改良されているようです。
イチジクには、大きく分けて3つのタイプの品種があります。一つは、春から初夏にかけて結実する「夏果品種」、もう一つは、秋に結実する「秋果品種」、最後は両方のタイプの「夏秋果兼用品種」です。どの品種を育てるかによって、剪定方法や栽培に適した地域も異なります。
イチジクの品種や剪定方法については、下の項目で紹介しますね。
イチジクの育て方
品種や剪定方法を紹介する前に、まず育て方について紹介しますね。育て方に関しては、どの品種であっても同じ育て方です。
水やり
イチジクは水が大好きなので、水切れして乾燥すると、落葉して株が弱ってしまうのですが、土の中が常に湿っているような過湿な状態が続くと、根腐れを起こしてしまうので、鉢植えの場合は、土の表面が乾いてから、鉢の底から水が流れ出すまでたっぷりと水をあためましょう。
鉢が置かれている場所によっては、西日や直射日光が根元にあたり、乾燥しやすい状態があると思います。そういう場合は、乾燥しすぎるのを防ぐために、根元に腐葉土などでマルチングをしたり鉢をアルミホイルで巻いたりして、日よけ対策をしましょう。
肥料
イチジクは、新しく枝を伸ばしながら実を付けるので、3月~10月位にかけて多くの栄養を必要とします。そのため、この間は肥料が途切れないように、1~2ヶ月に1回のペースで同じ肥料を与えてください。
肥料は、植え付けの時の元肥として有機固形肥料や堆肥を土に混ぜ込み、追肥として緩効性の化成肥料を施すといいでしょう。ただ、なるべく化学肥料の使用を抑えて、堆肥などの有機肥料の使用をおすすめします。
用土
イチジクの鉢植えに用いる土としての絶対条件としては、水はけと水持ちが良いことで、その条件さえ満たしていれば、どの様な土であっても使用することが出来ます。
市販されている用土ではなく、庭土などを利用する場合、土が粘土質なものであれば、川砂などを混ぜることで、栽培条件にあった土を作ることが出来ます。また、酸性の土よりも、弱アルカリ性か中世の土を好むため、苦土石灰を混ぜておくと良いでしょう。
市販されている用土を混ぜて使用する場合は、小粒の赤玉土と腐葉土を7~8対3~2の割合で配合したものを使用すると育ちやすい土になりますよ。
置き場所
基本としては、日当たり良い場所に置いて育ててください。イチジクは、耐寒性があまりない品種もあり、寒い環境にあると葉っぱや実が落ちてしまうので、冬の間は、日当たりが良く暖かい室内に移動して育てたほうが良いでしょう。
ただし、暖かい室内であっても暖房によって暖かくなっている室内はあまり管理場所としては適していないので、日差しの差し込む室内で冬をこすようにしましょう。
病気・害虫
割と病害虫には強い性質なのですが、かかる可能性のある病気は、「疫病・さび病」などで、気をつけたい害虫に関しては「カミキリムシ・センチュウ」などです。
疫病の多くは、熟し始めた果実に発病しやすく、疫病に侵された果実は、カビによって腐ったり、干からびたようにミイラ状態になったりします。
さび病は、葉っぱに症状が出ることが多く、まず最初に葉っぱの表面に淡褐色の小さな斑点が出来ます。その後、その葉っぱの裏側が黄褐色の粉状になり、やがて葉っぱが枯れて落ちてしまいます。
中でも、カミキリムシに対しての対策は特に必要で、カミキリムシは、枝や幹に卵を産み付けるため、それが孵化すると、幼虫が枝や幹の中を食べるため、株全体を枯らしてしまうことがあります。
カミキリムシの幼虫を見つける方法は、4月以降に親が食い入って空けた穴から糞が出ているかどうかでわかります。糞を頼りに、幼虫を見つけて捕殺してください。もしくは、6月頃に現れ始める成虫を捕まえて駆除しましょう。
イチジクに関しては、カミキリムシの被害さえ食い止め寄生することを食い止めることができれば、他の病害虫については、それほど神経質になる必要はありません。
果実の収穫時期と保存方法は?
いちじくの実は、株の下の方になったものから熟します。熟したかどうかを見分ける目安としては、先端が割れているかどうかで、先端が割れていると実が熟しているため、収穫するには絶好のタイミングなのです。
ただ、実が熟して裂果した後収穫が遅れると、そこから虫が入ったり腐ったりしてしまうので、早めに収穫してください。もし、熟す前の果実を収穫してしまった場合、そのまま置いておいても追熟しないので、砂糖漬けにしたりジャムにして食べるといいでしょう。
イチジクは、収穫してしまうと、日持ちしません。そのため収穫後はなるべく早く食べるといいのですが、たくさん収穫できるため、一度に食べきれません。
そこで、イチジクの保存方法ですが、食べきれないものは乾燥しないようにビニール袋などに入れて冷蔵保存するか、実をカットしてラップでピタッと包んだりフリーザーパックに入れたりしたものを冷凍保存します。
袋に入れて冷蔵保存する場合、イチジク同士が重ならないように入れてください。重なってしまうと、その部分が傷んでしまいます。また、冷蔵保存の期間としては、1週間程度です。
冷凍保存の場合は、食べる時は解答せずにそのまま食べるか、ジャムにしたりヨーグルトに入れて食べたりするといいでしょう。
イチジクの種類
イチジクの品種はたくさんありますが、この項目では、イチジクの品種の一部を、夏果・秋果・夏と秋の両方で収穫できる夏秋兼用品種に分けで紹介します。
秋果や兼用品種に比べると、夏果の果実は大きく美味しいのですが、夏果の果実は、その名の通り夏に果実ができるので、どうしても、梅雨の時期とぶつかり、雨によって腐りやすくなってしまいます。
そのため、夏果の一般家庭での栽培はあまり向いているとは言えず、流通している苗も、秋果や兼用品種が多いです。
【夏果専用品種】
夏果のイチジクは、品種によって多少異なりますが、6月下旬から8月上旬が収穫時期です。
●ザ・キング
果実が大きく、きめ細やかでなめらかですが、味は割と淡白です。食べやすい甘さなのでそのまま食べたり、ドライフルーツとして食べられている品種です。
果実が大きい上に、たくさん実るので、十分にイチジクを堪能できますよ。皮は黄緑色ですが、果肉は赤色をしています。
●ビオレ・ドーフィン
とても大きな果実を付けます。しかも、甘みが強く酸味が控えめで、成熟しても果実が裂けません(裂果しない)。また、樹勢がそれほど強くないので、コンパクトに育てることが出来ます。
【秋果専用品種】
秋果のイチジクの収穫時期は、品種によって多少異なりますが、8月下旬から10月中旬です。
●蓬莱柿(ほうらいし)
樹勢が強く収穫量も多い品種で、昔から日本で栽培されている在来種(日本種)で、別名を早生日本種ともいいます。
日本の気候に慣れており寒さや乾燥に強く、育てやすいです。果実は白く、味はドーフィンよりもよく甘いです。しかも、他のイチジクに比べると、収穫した後、多少日持ちします。
ただ、雨に当たると、果実が避けやすいという難点があります。また、蓬莱柿が実を付けるのが、植え付けてから3年以降になります。
●セレスト(セレステ)
果実は小さいですが、皮が薄く甘が強い品種です。樹勢があまり強くなく樹高も低めなので鉢植え栽培に適しており、スペースがそれほど取れない人や小さく育てたい人におすすめです。
●ゼブラ・スイート
果実は小ぶりで、青と白の縞模様が入っています。その縞模様が美しく、観賞用としての需要もあるようです。果実自体は甘味と酸味のバランスがよく食べやすい品種です。
縞模様が薄くなると、果実の食べごろなので、青と白の可愛らしい実を存分に堪能してから、収穫するとちょうどいいかもしれませんね。
●ビオレーソリエス
フランスでは代表的な品種で、果実の糖度が高く蜜のように甘い品種です。また、裂果が少ないです。イチジクの品種の中では新しく出てきた品種です。「ビオレー」と伸ばさず「ビオレ・ソリエス」とも呼ばれています。
●ホワイトアドリアチック(アドリアチック)
樹勢が旺盛な品種で、大きくて丸い実を付けます。皮は黄緑色ですが、果肉は赤色をしていて、とても香りが良く甘いです。比較的寒さに強い品種ですが、冬場は日当たりの良い暖かい場所に移動させたほうが無難でしょう。
【兼用品種】
兼用品種の場合は、初夏から秋(6月下旬から10月中旬)にかけて収穫ができます。ただ、品種によっては、夏よりも秋の収穫量のほうが多いものもあります。
●アルマ
果実の皮が、緑色から黄色がかった色をしており、果肉は赤みがかった琥珀色をした果実を付けます。イチジクの中では、わりと耐寒性があります。果実は小さめですが、裂果に強く悪天候で育っても腐りにくいため、生産性が高いです。
●ヌアール・ド・カロン
果実の糖度が30度もあるとても甘いイチジクで、イチジクの中では、最高品種と言われていますが、果実は、一般に流通していないため、この実を食べるには、家庭で育てて収穫しなければ食べる事は出来ません。
●バナーネ(ロングドュート)
果実は重さが200クラム以上と世界最大級で、果肉がほんのりとバナナの味がするため、バナナクイーンとも呼ばれています。6月下旬から7月中旬、8月下旬から10月に収穫可能で、果肉はねっとりとしたバナナのような甘みが特徴で、糖度も22度あります。
●ブリジアッソット・グリース
果実の大きさとしては、ごく一般的なサイズです。育て方次第では、糖度が30度くらいにまでなるようですが、甘みを考えずに(普通に)育ててもバナーネと同じくらいの糖度にはなるようです。
兼用品種なので、夏にも収穫することが出来ますが、夏果の収穫量はそれほど多くはありませんが、秋果は9月から10月にかけて収穫することが出来ます。
●ブラウンターキー
6月の下旬から7月下旬と8月下旬から10月下旬にかけて2回収穫期があります。樹勢が弱いため、小さく仕立てることが出来ます。ただ、耐寒性は少し弱いです。
果実はそれほど大きくなく夏果は80グラム、秋果が50グラム程ですが、味はよく、夏果も結構収穫できます。
●桝井ドーフィン
栽培数が一番多い品種です。味はそこまで甘いという感じではありませんが、国内で販売されているイチジクの殆どが、このイチジクであるため、食べた時の感覚としては、一番馴染みがあるかもしれません。
収穫量が多く、樹勢がそれほど強くないため、樹の収まりがよく育てやすいです。ちなみに、夏に採れる実より秋に採れるもののほうが甘いようなので、両方を食べ比べてみるのも良いかもしれませんね。
イチジクの剪定方法
夏果・秋果・兼用品種それぞれに剪定方法が異なることは、上でも紹介しました。ここでは、それぞれの剪定方法を詳しく紹介します。
どの品種であっても言えることは、葉っぱが増えすぎて果実に日光が当たりにくくなったり、枝葉が茂って込み入って風通しが悪くなると、果実の育成が鈍くなっったり、病害虫が発生しやすく成るので、勢いがなく弱々しい枝や内側に向かって伸びていたり、邪魔になっている枝は、根元から切り落として風通しが良くなるようにしましょう。
また、イチジクの果実は、日光を浴びることで熟すため、果実が影にあると、色が変わりません。イチジクの葉っぱは、結構大きいので葉っぱが茂りすぎている時には、影になっているものから間引くと良いでしょう。
ただし、葉っぱが光合成することで果実の糖度も上がるため、葉っぱを取り除きすぎないように気をつけてくださいね。
①夏果品種の剪定方法
夏果の品種は、落葉している12月~2月の間に行います。前年の秋から冬にかけて果実となる花芽が付きます。落葉した後の枝を見ると、小さな芽がついているのですが、それが花芽で、その花芽を切り落としてしまうと、もちろん着実せず、夏の収穫ができなくなってしまいます。
1本の枝に5~8個の実がつくように、枝の根元から数えて5~8個の花芽を残しその先を園芸用のハサミなどで切ります。先は切らずに残しても良いのですが、切り落とすことで、脇枝を出すので結果として翌年からの収穫量が増えますよ。
枝に花芽がついていない枝は、混み合っていなければ間引かず、先を切ることで、翌年に新枝が出てその次の年からは、花を増やすことが出来ます。花芽が着いている枝の剪定よりも、こちらの剪定の方が実は大切です。
もし、育てているイチジクの風通しが良い様なら、花芽は10個位まで残しておいても大丈夫ですが、風通しが悪くなると、果実が腐りやすくなるので、気をつけてくださいね。
また、花芽が付いていたとしても、枝が込み合っていたり、伸びすぎている枝の場合は、風通しが悪くなり、病害虫のリスクが高くなるので、思い切って間引きましょう。
②秋果品種の剪定方法
秋果品種の剪定も落葉後の12月から2月に行います。秋果の果実は、春以降に伸びた新枝に花芽を付けたものが生長して収穫することになります。
夏果品種同様に、冬に落葉した枝を見ると小さな花芽が見られますが、秋果品種の場合は、根元から花芽を3つほど残し、その枝を切り戻します。
そうすることで、春になると脇枝が出てきて収穫量を増やすことが出来ます。枝の中で元気がないものは、根元から切り落とし間引きましょう。
③夏秋兼用品種の剪定方法
夏秋兼用の品種は、もちろん夏にも秋にも収穫することが出来ますが、品種にもよりますが、日本の場合、梅雨によって夏の収穫は難しくなるので、兼用品種であっても、秋果に狙いを絞った剪定をしたほうが無難と言えるでしょう。
ただ、夏果に挑戦したい人は、夏果品種と同様の剪定を12月~2月の間に行ってください。ただし、夏果のために剪定をしないでおくと、秋の収穫は殆どありません。
秋果狙いの人は、夏果の花芽を3~4個ほど残して枝を切り落とし、脇芽が出るようにします。そうすることで、秋果の収穫が増えます。ただし、花芽をほどんど切り落とすことになるので、夏果の収穫は、あまり望めません。
まとめ
お店では一般的に販売されていない品種があり、家庭で栽培することでその果実を収穫することが出来ることや、梅雨があるため日本では育てることが難しいようですが、夏果のほうが美味しいということがわかりました。
ぜひイチジクを育てて、あまり口にすることの出来ない品種や夏採れの果実を味わってみてはいかがでしょうか?