初夏になると、店頭ではビワをよく見かけるようになりますね。甘い果実をたくさん実らせるビワは、遠い昔から生薬や鍼灸などに利用されるほど薬効があると言われています。今回は、ビワの育て方を詳しく紹介します。
ビワとは?
ビワの葉っぱは、肉厚な楕円形をしており、葉っぱの表面には、くっきりと葉脈が浮かび上がっているのが特徴です。常緑樹で、11月~2月にかけて開花し、5月~6月にビワの実を収穫することが出来ます。
耐寒性があり、初めて果樹を育てるという人にも育てやすくおすすめの植物ですが、ビワの花や果実は、それほど寒さに強いというわけではなく、寒さによって枯れてしまう場合があるので、冬場に-5℃以下になるような寒冷地の場合は、寒さに強い品種を選んだり、防寒対策をする必要があります。
ビワは、毎年花や実を付けてくれますが、実が育ち始めると、鳥がやってきて実を食べてしまうので、鳥に食べられる前に収穫するようにしましょう。
ビワの品種
ビワにもいくつもの品種があり、品種によって耐寒性や果実の甘みなどが異なります。上でも書いたとおり、ビワの木自体には耐寒性がありますが、花や果実にはそれほど耐寒性がなく、-5℃を下回るとしぼんでしまうので、特に初めてビワを育てる人は、寒さに強い品種を選ぶことをおすすめします。
品種には、細長い果実を持ち春に収穫することが出来る『室戸早生』や寒さに強く収穫量が多い『クイーン長崎』や『涼風』などなど、沢山の品種があります。
その中でも定番となっている品種が、『田中』といって、果実の重さが70gと比較的大きな実を付け、味のバランスも良いため人気の品種であるものや果樹自体は40gと小さいですが、甘みの強い『茂木』、寒さに強く千葉県で多く栽培されている『大房』です。
ビワの栽培においては、まずは、上に挙げた品種のビワを育て、栽培に慣れ物足りなくなってきた頃に他の品種を買い足していくのが一般的とされています。
ビワの育て方
植え付け
ビワの場合、種から植える時と苗植えのときでは、適期が異なります。苗植えの場合、7号~8号の鉢を用意し、そこに2月~4月の間に植え付けましょう。
種植えの場合は、5月~6月が適期ですが、種から育てると、実がなるまで早くても8年ほどかかるので、早く収穫したい人は、園芸店やホームセンターなどで販売されている苗を購入して、鉢に植え替えたほうが良い実が早くに収穫できると思います。
水やりと肥料
ビワは、乾燥に強く反対に過湿を嫌う性質があるため、土の表面が乾いたのを確認してから水をやるようにしてください。肥料は、花が咲き終わって実をつけ始める2月~3月に、即効性のある化成肥料をあげましょう。また、収穫が終わった6月頃にも、同様の肥料を与えます。
11月~12月には、寒肥として堆肥や油かすなどの有機肥料を与えましょう。このとき、株の近くに施すと、肥料焼けを起こす可能性があるので、株から少し離れた場所に施してくださいね。
置き場所
ビワの木は、寒さに強く半日陰や日陰でも育つことが出来ます。とはいえ、もともと日光を好み、また角直射日光に当たってもホドン度は焼けを起こすことがない植物で、日当たりの良い場所で育ったほうが実も甘くなるので、なるべくは日当たりの良い場所に置いて育てましょう。
寒さに強いびわの木ですが、花や蕾や果実は寒さに弱く、-5℃以下の環境では、枯れてしまいます。しかし、ビワの開花時期というのは、ちょうど寒くなる11月~2月ころなので、特に寒冷地で育てる場合は、株が蕾を持つ前に日当たりが良く暖かい場所に移動するか、防寒対策をするようにしましょう。
摘蕾と摘果
摘果(てきか)というのは、「出来た実を摘むこと」で、摘蕾(てきらい)というのは「蕾を摘むこと」です。ビワの場合、実がたくさんできるため、出来た全ての実を実らせてしまうと、栄養分が十分に行き届かず、甘みが薄くなったり実が小さかったり、株自体が弱ってしまうことがあります。そうならないように
また、ビワは、花を付けた分だけ実になるので、花が多過ぎる場合にも、咲いて実になる前にある程度の蕾を摘み取ってしまいます。摘蕾は、9月に行い付けている蕾全体に対して、1/3~半分ほどまで減らします。蕾は、1箇所にかたまって付けるので、それぞれ4~5個ほどにまで減らしましょう。
摘果は12月に行います。目安としては、「葉っぱ30枚につき1個の果実」くらいで、1房に実が3個ほどついている程度まで摘み取りましょう。
剪定
剪定というのは、植物が成長して枝や葉っぱが込みいてくると、風通しが悪くなり、そのために病害虫が発生しやすくなったり、成長して樹形が悪くなったりするので、込み入ったり内側に向かって育った枝を切り落としたり、伸びすぎた枝先を形が整うように枝先を切りそろえたりすることです。
ビワに関しては、樹の成熟度よって時期が異なります。まだ実を付けていない3年程度の若い株は、剪定しなくても大丈夫です。4年以上過ぎて、実を付けるようになった株は、邪魔になっている枝を剪定します。
ただし、ビワは、その年に伸びた枝の先に実を付けるので、剪定する時は、枝先を切り落とさないように注意が必要です。
剪定の適期としては、花が咲き終わる頃(2月~3月)から実がついている頃なのですが、3月上旬は、ビワが新芽を出す力(萌芽力)が強い時期なので、この頃に選定すれば、強めの剪定でも、株が耐えてくれますよ。
また実がつく頃に剪定する時は、花を付けていなかったり、実がなっていない古い枝を確認しておいて、それらを切り落としたり、花や実がなっていても、内側に向かって伸びている様な枝や込み入って邪魔になっているような枝は、切り落として風通しや日当たりを良くしましょう。日当たりに関しては、幹に日光が当たっていれば大丈夫です。
ほかにも、ビワの場合、剪定方法が品種によって異なります。上に向かってまっすぐ枝を伸ばす様な茂木などの品種は、「変形主幹形」といって、横に伸びる枝を残すように仕立て、田中などの横に枝を広げて育つ品種は、盃のよな形に整える「盃状形」に仕立てましょう。
それぞれの剪定方法は、以下のとおりです。
●変形主幹形
幹は、2~3mほどの高さまでに切り落とし、横に広がっている枝は、幹を挟んで左右が互い違いになるように剪定します。このとき、横に生える枝の上下の間隔が、30~45cmほど空けて剪定すると良いでしょう。
●盃状形
樹形を見た時に盃のような形になるように2~3本の枝で整えます。2~3本の枝を高さ2m弱の位置で切りそろえ、それより上に生えている枝はその高さまで剪定し、樹形を整えます。
植え替え
ビワの根っこは、張りが早いため鉢植えで育てた場合、根詰まりを起こしやすい性質があります。そのため、最低でも2~3年に1度の植え替えが必要です。ビワの植え替えは、他の観葉植物とは違い、土をほとんど落とさずに太い根っこを傷をつけないように、新しい用土に植え付けます。
植え替えの時期は、鉢の大きさを増やすのですが、10号以上の鉢になると、移動をさせることがなかなか困難になるので、自宅で鉢植えで育てる場合は、10号までの大きさが限界かと思います。
ビワの実をきれいに育てるには?
上でも触れたとおり、ビワの実は鳥に狙われやすかったり、強風や害虫によって傷つきやすかったりするので、きれいな実を育てるためにも、時期が来たら「袋がけ」といって実に袋を掛ける作業が必要です。
袋がけの時期は4月頃で、ホームセンターや園芸店などに果実袋といって、いろいろな種類が販売されています。
袋の種類の中に、ビニール製のものがありますが、ビニール製の袋は、金や水を防ぎにくく、コストパフォーマンが高いので、なるべく紙製の袋を使用したほうが良いでしょう。
まとめ
今回は、ビワの育て方について紹介しました。ビワは、剪定や植替えなど多少世話に手間がかかりますが、毎年たくさんの果実を収穫できるので、果樹を育てようと考えている人は、ビワを育ててみるのも良いかもしれませんね。