睡蓮(すいれん)の育て方について

モネの代表的な絵画でもおなじみの『睡蓮』。水辺で美しく咲く睡蓮の花を見ているだけで、とても癒やされますよね。広いため池などで育てられているイメージがありますが、自宅での栽培も可能なんですよ。今回は、睡蓮について紹介します。

 

睡蓮とは?ハスとの違いは?

睡蓮は、熱帯から温帯地域の水辺であれば、世界のどこでも育つことが出来る植物で、地下茎から茎を伸ばし、1本の深いスリットが入った円形の葉っぱや花を水面に浮かべて育ちます。

葉っぱと花が水面に浮いているため、ホテイアオイのようなプカプカと浮く水草をイメージしますが、実は、水生の宿根草(しゅっこんそう)です。

 

宿根草とは、多年生植物の一種で、休眠期に地上部は枯れてしまいますが、根っこである地下部は生きているため、生育条件が整えば、再び生長する植物のことです。

睡蓮の花には、赤・白・黄色・ピンク・紫・青などそれぞれ単色からなる花やいくつかの色が混在する花など、品種によって様々です。また、種類によっては、「夜咲き品種」といって夜の間に花を咲かせる品種もあります。

 

さて。睡蓮と似た植物にハスがあります。どちらも『蓮』という漢字を使うので、同じもののように感じますが、睡蓮はスイレン科、ハスはハス科に属した宿根草で別の植物です。また、ハスの根っこは、レンコンとして多く流通していますが、睡蓮の根っこは、レンコンのように食べることは出来ません。

見た目がよく似ている睡蓮とハスですが、決定的な違いというと、睡蓮の葉っぱや花が水面で展開するのに対し、ハスの葉っぱや花は、水面より上で展開します。(ただしハスの葉であっても水面に浮くものもあります。)

 

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睡蓮の育てやすい種類は?

睡蓮には、世界各地で40種近くの原種があり、そこから園芸品種がたくさん作られていますが、それらを大きく分けると、耐寒性の温帯睡蓮(耐寒性睡蓮)と非耐寒性の熱帯睡蓮の2種類あります。

どの種類であっても、土の中にある地下茎から茎を長く伸ばし、水面に葉っぱや花を浮かべる特徴は変わりません。温帯睡蓮や耐寒性睡蓮と呼ばれる睡蓮は、ある程度寒さに耐性があるため、それほど育て方は難しくありません。春先に生育活動が始まり、5月から9月頃まで花を楽しむことが出来ます。

 

温帯睡蓮と呼ばれる種類の中には、「ヒメスイレン」と呼ばれる品種があり、この睡蓮は、日本に自生しているヒツジソウと呼ばれる食物を改良しており、寒さに強いため育てやすい睡蓮と言われています。

熱帯睡蓮は、寒さに弱く、気温が15℃を下回ると枯れて死んでしまうため、晩秋から冬にかけては、保温が必要となります。また、熱帯睡蓮の場合、生育活動が水温が20℃を超え始める6月頃からとなり、花の開花は7月~10月となります。

 

 

睡蓮の育て方

睡蓮は水生植物なので、購入した苗は、水の中に沈めて育てます。そのための容器が必要になります。一般的には「スイレン鉢」と呼ばれる円形で口が広い盃型をした水鉢で育てます。

とはいえ、絶対スイレン鉢を使用しなくてはいけないわけではありませんが、水鉢が四角いと、伸びた根っこが角を伝って鉢の外に出てその部分が傷んでしまうので、四角い形の容器はあまりおすすめできません。

睡蓮は、睡蓮を植えた植木鉢をスイレン鉢に沈めるのが一般的です。また、この方法で育てると、管理も楽になります。

 

 

植え付け

睡蓮は、田んぼの土のような土壌を好むので、睡蓮がどの種類であっても、粘着性のある土で育てます。

ホームセンターなどで販売されている『水生植物の土』や『荒木田土』を購入するか、見当たらない場合は、小粒の赤玉土もしくは黒土を水で練ったものを使用してください。

 

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温帯(耐寒性)睡蓮の場合

温帯(耐寒性)睡蓮の植え付け適期は4~5月です。用意した用土は、鉢に入れる前に予め緩効性肥料を混ぜ込み、それを鉢の1/3ほど入れます。鉢は、6~7号のやや大きめのものを使用すると、花が付きやすいですよ。

もし、肥料の混ぜ込みを忘れた場合は、土を入れた底の方に緩効性化成肥料を入れてもいいです。

 

土を入れたら、苗の芽の先端が土から出るように浅植えします。そこまで出来たら、スイレン鉢に水を入れ、その中に鉢をそっと沈めて出来上がりです。水に沈めた時、苗だけ浮き上がらないように、しっかり土を固めておきましょう。

スイレン鉢に沈め終わったら、それを日当たりの良い場所に移動させて完了です。スイレン鉢の水の量としては、芽の先端から水面まで15cmほどの距離です。それより多かったり少なかったりした場合は、水の量を調節してくださいね。

 

 

熱帯睡蓮の場合

熱帯睡蓮の植え付け適期は6月~8月です。熱帯睡蓮は、小さめの鉢でも育つので、購入した際の鉢が4号以上であれば、そのままスイレン鉢に沈めても構いません。

熱帯睡蓮の場合でも、植え付け方法は温帯睡蓮と殆ど変わらず、用土は粘土質の土を使用し、鉢に浅植えしてから水を張ったスイレン鉢に沈めます。スイレン鉢の水の量も温帯睡蓮と一緒です。

 

 

水やり

睡蓮は、水を張った鉢の中に沈めて育てるので、日々の水やりは必要ありません。ただし、スイレン鉢の水が減ってきたら、足してあげましょう。開花時期にはよく水を吸うため、スイレン鉢の水の減りが早くなるので、その時期は、こまめに水の量をチェックするようにしてくださいね。

とはいえ、水の量が深すぎたり、藻が生えたりして水が濁ったりすると、睡蓮を植えた鉢まで日光が届かず株が弱ってしまうので、適度な水の量にし、水が腐ってにごり始めたら新しい水に入れ替えるなどして生育環境を整えましょう。

 

冷たすぎる水は、たとえきれいな水であっても株を弱らせてしまいます。新しい水に入れ替えたり、減った水を足す場合でも、特に特殊な水を使用するのではなく、蛇口からひねった水道水を使うといいでしょう。

また、水が溜まった場所には、夏場ボウフラが湧きやすくなるので、対策としてメダカや金魚などの小魚をスイレン鉢に放っておくと良いでしょう。他にも、ヌマエビなども一緒に放っておくと、藻を食べてくれるので、水をきれいに保っておく対策になりますよ。

この時、小魚を思って餌を与えすぎてしまうと、水が汚れてしまったり、湧いてきたボウフラを食べなくなるので注意が必要です。

 

 

肥料

株の様子を見て、追肥をしてください。肥料は骨粉や油かすなどの有機質な緩効性肥料を2~3グラムほど株元から離して土の中に埋めてください。土の上に置くだけにすると、水中に肥料が溶け出してしまうので、しっかり土の中に押し込みましょう。

肥料を与える時期としては、耐寒性睡蓮は、真夏の時期を除いた植え付けから9月頃まで、3~4回、熱帯睡蓮の場合は、6月~9月の間で、4~6週間に1回の割合で、元肥と同じ肥料を根元から離した場所に与えましょう。

どの種類であっても、休眠期(お盆過ぎ辺りから)には肥料を与えないようにしましょう。お盆を過ぎても新しく葉っぱが出てきたり蕾が出てきたりしますが、休眠期に肥料を与えると、肥料焼けといって肥料の濃度が濃くなって根っこが傷んで、株が弱ってしまうので、そこは見なかったことにして、肥料を与えないようにしてくださいね。

 

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置き場所

睡蓮は日の光を好み、日光が当たればあたるほど生長が早く花の付き方も良くなります。葉っぱを楽しみたい人は、明るい日陰や半日陰などで育てると良いですが、花も楽しみたい人は、日当たりの良い場所に置いて管理するようにしましょう。

 

 

睡蓮の育成サイクルは?

睡蓮は、春になると芽を出しやがて花が咲き、寒くなると休眠状態に入り葉っぱが枯れてなくなります。春から夏にかけては生育が旺盛で次々と葉っぱが生えてきますが、葉っぱが多すぎると株元(球根)に日の光が十分に届かず、花芽が出にくくなったり、葉っぱに栄養の多くが行くため、花が咲きづらかったりします。

なので、脇芽はある程度根元から間引いて日当たりを良くしましょう。また、葉っぱが枯れたり黄色くなったものも摘み取るようにしましょう。それらをそのままにしておくと、水が腐ってしまうことがあります。

花が咲き終わると、花殻は下を向きます。花が咲き終わると種が付きますが、睡蓮を種から育てることは、とても難しく、さらに種ができると球根が弱ってしまうので、咲き終わった花は、心を鬼にして株元から花茎ごと切り落としましょう。

 

 

冬越の方法

育てている睡蓮が、「温帯睡蓮(耐寒性睡蓮)」か「熱帯睡蓮」かによって冬越の方法は変わってきます。温帯睡蓮(耐寒性睡蓮)の場合は、スイレン鉢の水面にうっすら氷が張る程度で、その下はまだ水の状態であれば、屋外での越冬が可能です。

熱帯睡蓮は寒さに弱いため、水が凍りつかない水温(できれば10度~15度)を維持して越冬させます。発泡スチロールなどの容器にで苗を移し替え、水温が下がらないようにして、気温の変化があまりない場所(玄関や物置など)で管理しましょう。寒い時期であっても、水気を切らさないように気をつけてください。

冬の間に鉢に病原菌などの雑菌が繁殖しないように気をつけながら管理し、翌春の4~5月頃に屋外に移動させましょう。

 

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まとめ

水に浮かぶ花を見ているだけでとても涼やかな気分になれますよね。水生植物で一見育てるのが難しそうに感じますが、しっかり管理すれば割と簡単に育てることが出来ます。ぜひ幻想的な睡蓮を育ててみてはいかがですか?