ぷっくりとした葉っぱが特徴の多肉植物は、世界の様々な場所に分布しており、生長期は、春秋型・夏型・冬型と種類によって異なります。ここでは、その種類ごとの育て方を紹介します。
多肉植物の特徴
多肉植物は、アフリカやその付近の島々など、世界中様々な場所で自生していて、種類も様々ですが、多くの多肉植物は、葉っぱや茎、根っこなど植物自身の体内に沢山の水分を蓄えて、乾燥した地域でも育つように進化してきました。
昼間は、水分の蒸散を防ぐために気孔を閉じています。しかし、気温が低くなる夕方から夜にかけて気孔を開いて呼吸を始めます。多肉植物の歴史は深く、日本に入ってきたのも、1760年代といわれています。
多肉植物の種類
種類が多い多肉植物の種類の中から、それぞれに人気がある植物をいくつか紹介します。
春秋型種
エケベリア
この植物は、ベンケイソウ科エケベリア属の植物で、原産地はメキシコや中米などです。5~6cmの小型の種類から40cm近くまで大きくなる種類まであり、葉っぱの形も様々でその種類は豊富です。
ロゼット型の葉っぱは、花のように華やかで、フラワーアレンジメントやブーケに使われることもあります。
センペルビウム
センペルビウムは、ベンケイソウ科センペルビウム属の植物です。名前の由来は、ラテン語で‘semper(常に)’と‘vivum(生きています)’という意味で、その名の通りとても強い品種で耐寒性があり、とても育てやすいです。
ハオルチア
ハオルチアには、大きく葉っぱが軟らかい軟葉系と、葉っぱが硬い硬葉系の2種類にわけられます。どちらも種類も直射日光を苦手としますが、品種の中には、置かれた環境次第でどんどん子株が出来るような上部な品種もあります。
グリーンネックレス
キク科セネキオ属のグリーンネックレスは、その名前の通り、緑の玉のような葉っぱが連なる植物で、その姿が可愛らしく人気がある植物です。耐寒性があり丈夫で育てやすいため、関東より南の地域では戸外での管理も可能なほどです。また、ほのかな芳香のある花を咲かせます。
夏型種
ユーフォルビア
トウダイグサ科ユーフォルビア属(トウダイグサ属)は2000種類以上もあります。その中でも、多肉植物に分類されている植物は、500~1000種類です。
株の形により大きく分けて、柱形・球形・低木状・コーデックス・蛸物(たこもの)の5種類に分けることができます。ハナキリンや鑾岳(らんがく)、瑠璃晃(るりこう)などがこの種類に属します。
カランコエ
ベンケイソウ科カランコエ属のこの植物は、南アフリカや東南アジアなどに生息しています。種類が豊富で、葉っぱがギザギザしているものやふわふわしたもの、紅葉する品種まであります。花も咲きますが、こちらも鮮やかできれいな色の品種が沢山あります。
アガベ
乾燥した地域に生息する多肉植物のアガベは、放射状に広がった葉っぱに緑のトゲがあるものが多いです。アテネータ・吉祥冠・プミラなど種類も豊富です。
コチレドン
ベンケイソウ科コチレドン属のコチレドンは、夏型と春秋型の2種類があります。品種によって大きさが変わります。熊童子のような小ぶりの品種から、葉っぱが手のひらサイズの大きさになる唐印などがあります。
冬型種
黒法師
ベンケイソウ科アエオニウム属の黒法師は、冬型の多肉植物の代表ともいえる植物です。アエオニウム属の中でも、最もポピュラーな品種で、茎の上部には放射(ロゼット)状の葉っぱを付けます。
その姿はまるで花が咲いているようです。葉っぱの色がこの植物の特徴で、光沢のある黒紫色をしています。
リトープス
日本では「メセン(女仙)」と呼ばれており、その由来はサボテン(仙人掌)が男らしい植物なのに対し、ツルツルして様々な模様を装った姿が、女性の仙人掌に似た植物であることからその名がついたと言われています。
リトープスは、脱皮をする植物で、脱皮が始まったら断水をします。
コノフィツム
こちらも、メセンの呼び名で日本で流通し脱皮する多肉植物です。南アフリカやナミビアが原産で、冬に生長期を迎えます。ぷっくりとしたフォルムは、葉と茎が一体化し、まるで丸い手を合わせているような可愛い姿が人気を集めています。
多肉植物の育て方
春秋型種
この種類の適温は、10~25℃で、3~5月の春と9~11月の秋に生長して、夏と冬は休眠します。管理する場所としては、なるべく日当たりの良い窓辺などに置きましょう。
しかし、晩秋から冬にかけては、窓辺に置いておくと、冷気に触れてしまうので、窓から離して内側へ移動させ、気温が高くなる日中は、日光浴させると良いでしょう。
また、強すぎる直射日光は、葉焼けといって葉っぱが火傷した状態になり、植物が枯れる原因となるので、レースのカーテンなどで直射日光を和らげて下さい。
水やりに関しては、生長期である春と秋は土が乾いてから、鉢の底から水が染み出るくらいたっぷり水やりをします。夏には、ほぼ断水をしますが、水を与える時は、夕方や夜など涼しくなってから、土が半日で乾くくらいの水か葉水を与えます。
高温多湿の環境を嫌うので、水を与えることで蒸れてしまい、根腐れといって根っこが腐ったり、株が傷んだりして枯れる原因になるので気をつけましょう。冬場も、ほぼ断水します。水を与えないことで植物内の水分の濃度を高め耐寒性を高めることが出来ます。
夏型種
夏に生長期を迎えるこの種類の植物は、熱帯地方が原産のものが多く、日の光をたっぷり当てる必要があります。気温が20~30℃になると最も生長し、冬には休眠します。
日差しを多く必要とするため、日当たりの良い場所に置くことで、元気に育ちます。ただし、夏型種であっても、強すぎる直射日光を当てすぎると葉焼けをするので、夏場は注意が必要です。
晩秋から冬にかけては、冷気によって株が弱ってしまう可能性があるので、窓から離した室内に移動してで管理して下さい。水やりは、春と秋には鉢の土が乾いてから、鉢の底から水が染み出るくらいたっぷりと与えます。
夏には、朝に水やりをすると、日中の暑さで蒸してしまうので、暑さが落ち着く夕方以降に、やはり土が乾いてから水やりをします。
冬場は、休眠期に入り、生長が止まるので水をほとんど必要としません。月に1回~2回程度、暖かい日中に土が乾いていて3~4日経っていたら水を与えます。葉っぱがしおれるくらい待ってから水やりをしても構いません。
冬型種
冬型の多肉植物の場合、それぞれの種類に合わせた育て方が好ましいので、購入した植物の育て方に準じた方法で管理して下さい。
多肉植物の害虫の対策と予防
多肉植物は、他の植物と比べると害虫による深刻な被害は多くありませんが、多少被害にあうことがあります。その代表的なものを対策や予防方法と共に紹介します。
カイガラムシ
この害虫は、乾燥した環境を好むため、同様な環境を好む多肉植物は比較的被害にあいやすいです。体長は1~3mmほどの小さな虫で、植物の汁を吸汁するため、株が弱ってしいます。さらに、カイガラムシの食害によってすす病など二次被害を受けることもあります。
この虫は、成虫になると体がワックスのようなもので覆われるため、殺虫剤が効きにくくなります。ですので、歯ブラシやハケなどで直接こすり落として駆除して下さい。ただし、取り除いたカイガラムシが、飛び散って他の株につかないように注意が必要です。
歯と歯の狭い隙間などに入り込んでいるカイガラムシに関しては、爪楊枝のような細長いもので掻き出すと良いでしょう。
カイガラムシをすべて取り除いた後には、専用の薬剤を散布しておくと予防効果があります。また、カイガラムシは狭い隙間や暗い場所を好むので、時々鉢の向きを変えたり、風通しの良い場所に置くことで、多少発生を予防できます。
ハダニ
ハダニの体長は1mm以下と小さく、黄緑や暗赤色をしたクモの仲間です。カイガラムシ同様、多肉植物を吸汁し、植物の生長を妨げます。また、吸汁された部分は、色が抜けて白や黄色っぽくなります。
駆除方法としては、専用の薬剤を散布するか、水に弱く流されやすいので、ある程度の勢いで水をかけると駆除することが出来ます。薬剤耐性が付きやすい害虫なので、薬剤を使って駆除する時は、一回で全滅させる必要があります。
ハダニを予防するには、葉水が有効ですが、多肉植物の場合根腐れを起こす可能性もあるので、葉水をするときはやり過ぎに注意して下さい。
アブラムシ
主に植物の新芽や花のつぼみに群生して吸汁するアブラムシは、すす病などのウイルスによる病気を媒介し、二次被害を誘発します。アブラムシは、増殖スピードが早いので、見つけた時は素早く対処して下さい。
さらに、繁殖力も強いので、駆除する時は、専用の薬剤を散布するか、流水で洗い流して徹底的に駆除して下さい。
予防としては、浸透性移行性剤を利用することをお勧めします。このタイプの薬剤は、有効成分が根っこから吸収され植物の隅々まで行き届き、長期間効果を発揮するので、高い効果が期待できます。また、アブラムシ以外の害虫にも効果を発揮します。
まとめ
多肉植物全般について紹介してきました。今回紹介した栽培方法等は、大まかなものになります。植物や環境によっては、この限りではないので、栽培する品種の育て方に沿って、育ててあげてくださいね。