ハオルチアには、植物とは思えないような美しく澄んだ姿の品種や、反対にシャープな印象を与える品種など、様々な種類があります。ここでは、そんなハオルチアの種類を紹介します。
多肉植物ハオルチアとは
ハオルチアは、ハオルシアとも呼ばれており、南アフリカが原産の多肉植物です。500種類くらいの品種があると言われていますが、今なお、様々な交配種がたくさん作り出されていることから、実際には500種類以上の品種があると言われています。
ほとんどの種類は、春と秋に生長期を迎える「春秋生育型」で、サイズもそれほど大きくなく、生長しても15cm程です。ハオルチアを大きく分類すると、「軟葉系」と「硬葉系」に分ける事が出来ます。
軟葉系の品種は、葉っぱが柔らかく透明感のあるのに対し、硬葉系の品種は、硬い葉っぱを持ち、シャープな印象を与える物が多いです。
軟葉系の多くの品種は、光を取り込むために「窓」と呼ばれる、淡く白色に透けた部分が葉っぱにあり、品種によって光の通し具合や色合いなどが、それぞれ違います。また、硬葉系よりも多肉質で太く短い葉っぱとなっています。
硬葉系は、葉っぱが硬くまるでアロエのような、スライリッシュでシャープなフォルムをしています。葉先は尖ったものが多く、その葉っぱが放射状に広がり幾何学的に整った姿になります。また、葉先の尖っている部分は「ノギ」と呼ばれています。
このように、軟葉系と硬葉系では全く見た目も違うので、バリエーションが豊富で、そのためコレクターも多く、希少な品種は、高額で取引されています。
ハオルチアの育て方
原産地では、岩の隙間や背の高い草の根元など、直接日の光が当たらない場所に生息する多肉植物なので、直接的な日の光よりも、明るめの間接的な光を好みます。そういう意味では、室内での栽培にも向いているといえるでしょう。
ハオルチアには、軟葉系と硬葉系の品種がありますが、どちらも生長期は春と秋にあり、10℃~25℃くらいの気温の間によく生長します。逆に、暑さや寒さに弱いので、夏場は涼しく風通しの良い室内に置き、冬場は、暖かい日当たりの良い室内に置いて育てましょう。
秋から春にかけては、明るい半日陰に置いて、たっぷりと間接的な光に当てて下さい。この季節であれば、直接光が当たっても大丈夫ですが、葉っぱを綺麗に保つには、軽く遮光したほうが良いでしょう。
また、真夏の強すぎる日差しに当たると、葉焼けを起こしたり蒸れて根腐れを起こしたりして、株が弱ってしまうので、なるべく直射日光が当たらない場所で管理して下さい。
水やりに関しては、基本的には乾燥気味に育てますが、原産地では、雨季の間何日も雨に当たっていることもあるので、少しであれば多めに水やりしても、元気に育てってくれます。
目安としては、土の表面が乾いた後2~3日経ってから与えると良いでしょう。ただ、気温が25℃を超えるようになってくる夏場は、与えた水によって株が蒸れてしまう可能性があるので、水遣りする時は、なるべく夕方以降に上げると良いでしょう。
また、夏や冬は、休眠期で生長が一時的に止まるので、夏の水やりは控えめにし、冬は完全に断水してしっかりと休眠させましょう。
ハオルチアの種類
軟葉系と硬葉系、それぞれのタイプ別に紹介します。
ハオルチア軟葉系
万象(まんぞう)
生えていた葉っぱを途中でばっさり切ったかのように、先端が平らになった葉っぱが特徴の万象は、自生地では、外敵から実を守るために、土の中に潜って葉っぱの表面だけを地面の上に出して、そこから光を集めて光合成を行っています。
生長がゆっくりで、30年ほどかけても5cmほどしか生長しません。そんなこともあり、なかなか高い値段で流通しており、斑入りの品種などは、ウン百万で取引されているものもあるようです。
ハオルチアの根は、細い髭のような根っこを伸ばすものが多いのですが、万象は太い根っこを真っ直ぐ伸ばすため、鉢は、深さがあるものを選ぶようにして下さい。
玉扇(ぎょくせん)
ハオルチアの中では有名な品種で、多肉質な葉っぱは、扇を広げたような形で生えています。また、葉っぱの先端は、万像のように途中で切断したかのような平らな形をしています。
先端の断面には、日の光を取り込みやすいようにレンズの役割を果たしていて、土に潜ったままでも光合成が出来るように進化した姿だと言われています。
オブツーサ
ハオルチアの代表種ともいえる品種がこのオブツーサで、ハオルチアと聞くと、オブツーサを思い浮かべる人も多いと思います。
「雫石」という通称も持つこの品種は、葉っぱの上の部分「窓」と呼ばれる半透明なところがあり、そこから内部まで光が通り、キラキラした美しい葉っぱが特徴です。
オブツーサの品種の中には、「白肌オブツーサ」や「紫オブツーサ」といった品種があり、白肌オブツーサは、通常のものより白っぽい色をしています。紫オブツーサは、紫色をしており、通常のオブツーサより生長がゆっくりです。
また、オブツーサ・トゥルンカータという品種は、通常のオブツーサよりも葉先が丸く、ぷりりんとしています。
ピクタ
葉っぱの先端の丈夫にのみ窓があるのが特徴で、株元から沢山生えた三角柱の葉っぱは、真上から覗くと三角形の葉っぱが折り重なって生えているように見えます。
ピクタは種類が多く、窓が透明な品種やレースのような窓の品種、モザイクのような窓の品種などが様々です。
ベヌスタ
原種であるベヌスタの葉っぱの表面は、白くて産毛のような毛に包まれているのが特徴で、その細かな毛は、時には透き通って見えることもあります。また葉色は、個体によって様々です。
ベヌスタは、ハオルチアの様々な品種との交配種があり、手頃な値段のものから高額なものまであります。
ピリフェラ
葉っぱの先に、硬葉系でも見られる「ノギ」と呼ばれるトゲのようなものがついているのが特徴で、軟葉系の中では、大きな窓が付いています。
一見痛そうなノギですが、ピリフェラのノギは柔らかく、また同じ品種でも、ノギの長さは個体によって長いものや短いものがあります。
ムンドゥーラ
出典:https://item.rakuten.co.jp/nihonkakiryuutuu/10005460/
垂直に成長していく種類で、葉っぱの内側にある窓は、生長とともに大きくなっていきます。ムンドゥーラの葉っぱは、縦に刃物でバッサリと切られたような形をしており、その断面のような所に、窓があります。
比較的耐寒性はありますが、霜が当たるような寒さには耐えることが出来ません。また、葉焼けを起こしやすいので、直射日光に当たらないように注意が必要です。
セミビバ
出典:http://www.salchu.net/green/log/eid629.html
白い細かな毛に全体を覆われた姿が特徴のセミビバは、一見サボテンのように見えますが、細かな毛は、ノギが伸びたものなので、サボテンのトゲのように硬くはありません。
セミビバの個体によっては、葉っぱの表面が見えなくなるほど毛で覆ってしまい、ハオルチアの特徴ともいえる窓が見えなくなるほどです。ただ、そんなセミビバも、苗が小さい間は、毛(ノギ)が生長していないので、葉先にあるきれいな窓を楽しむことが出来ます。
青雲の舞(ビッタータ)
明るいきれいな緑色の葉っぱの葉先がツンと尖って、窓は、葉っぱの先端から根元にかけて放射状に入っています。窓が大きめなのでとても美しく、「青雲の舞」という名前も納得です。その割には、普及種であるため意外と安価で流通しています。
球形に生長する特徴があり、葉っぱの縁にはノギが付いていますが、品種によってはノギがないものがあります。また、青雲の舞は、ハオルチアの中では、中型の種類で、生長すると15cmほどにまで大きくなります。
シンビフォルミス
出典:https://item.rakuten.co.jp/hirata-ns/rh0722/
葉っぱの形は、青雲の舞に似て葉先が尖っていますが、ノギはなりません。窓は葉脈に沿ったように入っています。そのため、光に当てると、窓に透けて黄緑色になっている葉っぱの中を、葉脈の濃い緑が映えてとてもキレイです。
シンビフォルミスの原産は南アフリカで、雨季の間は、何日も雨に当たることがあるので、乾燥気味に育てる多肉植物の中では、比較的水を好む性質があります。そのため、シンビフォルミスを育てる場合は、他の多肉植物よりも、少し多めに水やりをするといいでしょう。
コンプトニアナ
肉厚でむちむちした印象を与えるコンプトニアナの葉っぱには、その表面に様々な模様があり、その模様が存在感を際立たせています。この模様は、三角形に入った窓と葉っぱを走る白線から作られています。
窓は、放射状に広がった葉っぱの表面を全体的にあるため、一見すると、柔らかそうに見える葉っぱですが、実際に触ると硬いゴムのような感触です。
コンプトニアナは、ハオルチアの中では生長が早く、またたくさんの光を必要とします。光が少ないと徒長してしまうので、真夏の強すぎる直射日光以外は、日の光が十分に入る明るくて風通しの良い場所において育てて下さい。
レツーサ
葉っぱの先端は尖っていて、葉先の平面にある窓には、筋模様が入っていて、まん丸で柔らかな印象のオブツーサに比べると、スッキリとしてスタイリッシュな印象を与えます。
レツーサには、交配種がたくさんあるため、大型の品種から小型の品種まで豊富にあります。レツーサの中で有名なものだと、美しい斑入りの「寿」があります。
プラニフォリア
肉厚で幅広の葉っぱがロゼット状に広がるとても美しい品種です。鮮やかで優しい色合いの緑色の葉っぱが特徴で、その葉っぱが円形状に広がる様子は、まるで蓮の花のようで、プラニフォリアが一株あるだけでも、とてもエレガントで華やかな印象を与えてくれます。
京の舞
出典:http://taniku.co.jp/shopdetail/000000002112/
名前からして優雅な雰囲気の漂うこの品種は、明るい緑色の葉っぱがロゼット状に生えています。普段は、緑色をした葉っぱですが、紅葉シーズンになると、葉っぱの先がピンク色に染まり、見る人を楽しませてくれます。
暖かい季節になると、薄いピンク色の花を咲かせてくれるので、1年を通して様々な姿を楽しむことが出来ます。しかも、生長が早く丈夫な性質なので、初めてハオルチアを育てる人にもオススメです。
硬葉系
パークシアナ
出典:https://boy-racer.ssl-lolipop.jp/nihonkakiryuutuu/10003288/index.html
硬めの葉っぱを持つパークシアナの生長は、とてもゆっくりの小型の品種です。ある程度まで育つと、それ以上大きくならず群生します。先端が尖った葉っぱの表面は、ザラザラとした質感なので、マットな肌感で、その見た目から和名を「群鮫」と呼ばれています。
水分不足になると、葉っぱの色が黒く変色し、張りもなくなるので、生長期には水切れしないようにしっかり水やりをして下さい。
十二の巻
セダムやエケベリアなどに混ざって売れていることも多いようですが、ハオルチアの硬葉系の中では、よく見かける品種で、硬葉系の代表種といっても過言ではないほどです。
濃い緑の細長い葉っぱの先端は尖っていて、その葉っぱが放射状に真っすぐ伸びていきます。葉っぱの外側に入る、白い縞模様が特徴です。硬葉だと、直射日光に強そうなイメージですが、実際は直射日光が苦手なので、室内の明るい場所に置いて育てましょう。
十二の塔
葉っぱの形や色、模様の葉入り方は、十二の巻とよく似ていますが、それよりも葉っぱが短くこじんまりとしています。また、「塔」と名前がつく通り、葉っぱが塔のようになって育ち、株元から仔吹きして形よく群生してくれます。
ニグラ
ニグラとは、「黒質の」という意味があり、その名の通り葉っぱは、黒みがかっています。しかも、その葉っぱの表面には、イボのような細かい突起があり、ザラザラとした質感であるため、和名では、「黒鮫」という名前が付いています。
竜鱗(りゅうりん)
葉っぱの表面に竜の鱗のような網目模様が入っているのが特徴で、その葉っぱが塔のように上へどんどん重なって生長します。
尖って鋭い葉っぱは、三角形で放射状に生える品種です。竜鱗という名前だけ聞くと、なんだかとても厳つくて、どっしりとしたイメージですが、竜鱗の葉っぱには、すけ感があるため、実際見てみると、名前から感じる重厚感はそれほどありません。
竜鱗は、葉焼けをすると、とても目立ってしまうので、直射日光が当たらない場所で管理するように気をつけて下さい。
瑠璃殿(るりでん)
肉厚で硬い葉っぱが、重なり合うように生えています。先が尖って三角形のような形の葉っぱは、少しずつ位置をずらしながら生えているため、上から見ると渦を巻いたような螺旋状になっています。
「ストリアータ」とも呼ばれる瑠璃殿は、ハオルチアの中では比較的大きく生長する品種で、大きいものだと20cm近くまで育ちます。
松の雪
出典:https://www.weblio.jp/content/%E6%9D%BE%E3%81%AE%E9%9B%AA
緑の葉っぱに入る白い斑点が特徴の「松の雪」は、その斑点が、まるで雪が降り積もったような美しさがあることから、この名前がつきました。松の雪は和名で、「ハオルチア・アテナータ」という別名もあり、そちらの名前で呼ばれることもあります。
冬の星座
なんともロマンチックな名前のこの品種は、濃い緑の葉っぱに、白い大きめの斑点が横並びに入っているのが特徴で、まるで、白いドットで描かれたボーダー柄をしています。葉っぱの緑が濃い分、斑の白色とのコントラストが鮮やかで、華やかな印象を与えます。
ビスコーサ
ビスコーサの特徴は、やはり硬くて先が尖った濃い緑の葉っぱでしょう。その硬い葉っぱは、まるで葉っぱの塔のように連なりながら上へと育っていきます。先が尖った葉っぱが連なっている姿は、幾何学的でスタイリッシュで、どこかヤシの木やシュロなどの南国の木々をイメージさせます。
そんなスタイリッシュでクールな印象のビスコーサですが、春から夏にかけて、白に黄緑色の筋が入った長細いラッパ型の花を咲かせます。
五重塔
出典:http://taniku.co.jp/shopdetail/000000000846/
濃い緑の葉っぱと連なって生える先が尖った葉っぱは、見た感じビスコーサの樹形と似ています。しかし、ビスコーサよりも、葉っぱは柔らかく、少し丸まっている分多少柔らかな印象を与えます。
ハオルチアは、結構高価な金額のものが多いですが、樹形もシンプルでハオルチアの中ではリーズナブルな価格設定がされた品種です。
錦帯橋(きんたいきょう)
出典:https://item.rakuten.co.jp/yukei/s2918/
『錦帯橋』とは、山口県にある日本三名橋とも言われている橋で、そのフォルムがとても美しいとされています。
そんな橋の名前がついたこのハオルチアの葉っぱは、やはり美しい弧を描いて育ちます。葉っぱには凹凸があるため、光の当たり具合によって、葉っぱが光って見えることもあります。
スカブラ
出典:https://www.pinterest.jp/pin/433330795378889357/
葉っぱの表面に、沢山のぶつぶつがあり、見るからにゴツゴツとした葉形をしたスカブラは、葉色も渋めの緑で、まるで恐竜の指のようで、男性への贈り物にはぴったりです。
生長はとても遅く、葉っぱが段になって重なっているものやカーブを描いているもの、直立するものなど、樹形は様々です。
まとめ
ハオルチアの種類を系統別に紹介しました。宝石のようにキラキラとしたきれいなものから、スタイリッシュなものまで、様々な種類が存在するハオルチア。育て方もそれほど難しくはないので、もし気に入ったものがあったら、コレを機会に、育ててみてはいかがでしょうか?