水耕栽培と言うと、球根やハーブ類の栽培を思い浮かべますが、なんと!!野菜を作ることも出来るんです!!今回は、水耕栽培での野菜づくりについて、水耕栽培の方法や野菜の作り方を紹介します。
水耕栽培とは?
水耕栽培とは、土を使わず水だけで栽培する方法です。水だけで植物を育てると言うと、ヒヤシンスなどの「水栽培」をイメージする人も多いかと思います。確かに、ヒヤシンスなどの球根を水を張ったカップのようなものの上に置いて育てるのも、水耕栽培の一種だと言えます。
今回紹介する野菜の「水耕栽培」をもう少し詳しく説明すると、土を使わず、肥料を溶かした水(養液)だけで植物を育てる方法のことをいいます。
水耕栽培に必要なものは?
水耕栽培を始める時に、必要な道具は『種・肥料・容器・スポンジやハイドロボールなど』です。
何故苗ではなく種なの?
土栽培で、野菜やその他の植物を育てる時、園芸店などで苗を買うことが多いと思いますが、水耕栽培の場合は種から育てます。その理由としては、2つありあります。
1つ目は、園芸店などで販売されている苗は、植物同士が密集した屋外で販売されていることが多く、展示中に様々な病気に侵されている危険があります。
水耕栽培で、同時にいくつも野菜を育てる場合、大きな容器で栽培することがあります。その時容器内の養液は同じものを共有するため、苗が1つでも病気を持っていると、100%他の苗にも感染してしまうのです。
更に、養液の管理をする時にホースを使用していた場合、そのホースにも病原菌が感染している可能性もあり、知らずに他の植物にそのホースの水で水やりをすると、病気が拡大する恐れがあります。
2つ目の理由として、種から水耕栽培で育てたほうが、その環境に馴染みやすいからです。市販されている苗を使用する場合、ポットから根っこを取り出して、その周りについた土をきれいに落とさなくてはいけません。
丁寧に土をほぐしていても、その作業中どうしても根っこを傷つけてしまうことがあります。そうすると、野菜に負担がかかってしまいます。これらの理由から、水耕栽培をする場合は、なるべく種から育てるのです。
水耕栽培の肥料は?
水耕栽培用の液体肥料が市販されているので、そちらを使うようにして下さい。いろいろ液体肥料がありますが、『ハイポニカ液肥』は、初めて野菜の水耕栽培をする人でも使いやすいと言われています。
肥料を作るポイントは、3つあります。1つ目は、『量や重さを正確に量る』です。液体肥料は、計量カップを使って量ります。このとき、メモリの位置と目線を水平にしてピッタリの量になるようにしましょう。
また、粉の肥料を使用する場合も、使用料のグラム数が1グラムも違わないように、はかりを使って正確に量って下さい。水耕栽培の場合は、肥料の量をしっかり正確に量りることで、いつも同じ条件で栽培することが出来ます。
2つ目は、『計量の方法や器具を変えない』事です。計量カップやはかりなどは、どれも同じに感じますが、例えば、AとBの計量カップでそれぞれ100ccの水を量っても、僅かな誤差が生じることがあります。
また、使う道具によってメモリの表示の仕方が違うので、はかり間違える可能性も出てきます。毎日違う計量カップやキッチンスケールなどを使うと、その誤差などにより、同じ条件で栽培することが出来ない可能性が出てきます。そうならないためにも、いつも同じ道具を使って同じ方法で量るようにしましょう。
3つ目は、『器具を必ず洗う』事です。使用した計量カップ等は、中に肥料が残らないように、必ずきれいな水で洗い流して乾かしておきましょう。
水耕栽培の容器は?
水耕栽培は、ベランダや明るい室内などのちょっとしたスペースでも栽培することが出来ますが、もちろん養液を入れるための容器が必要となります。
養液を入れられるものであれば、どんなものでも利用できるため、例えば、ペットボトルや使わなくなったプラスチック製の鉢、発泡スチロール箱や塩ビパイプなど、家庭にあるものを再利用することも可能です。
ここでは、いちばん身近で手軽なペットボトル容器の作り方を紹介します。
ペットボトルを切りわける
ペットボトルを用意し、注ぎ口から1/3くらいの場所で、2つに切りわける。この時カットする場所に、ビニールテープなどを巻きそれを目印に切ると、きれいに切れます。
切り離した2/3の部分(下の部分)は養液を入れるパーツ、残りの部分(注ぎ口の部分)が、種を植える、いわゆる鉢のパーツになります。
鉢底を作る
鉢のパーツの注ぎ口をカットします。注ぎ口から広がった部分から1~2cmほどの所に目印を付け、カッターで切り落とします。
このとき、容器の中にビニールテープなど、円型のものを入れ、止まったところの注ぎ口に近い側のところで、外から油性マジックなどで線を書くと、簡単に真っ直ぐ印をつけられます。
鉢底の印をつける
注ぎ口を切り落とした鉢の部分を、養液を入れるパーツに乗せ、鉢底(②で切り落とした部分)を養液を入れるパーツの側面に油性マジックで印をつける。
その線が、今後の養液量の目安になるので、分かりやすいペンで印をつけるようにして下さい。
アルミホイルを巻く
養液を入れるパーツに、アルミホイルを巻きます。これは、もの発生を抑えるための役割があります。アルミホイルを巻いてテープなどで止める。
このとき、底の部分が余っているようなら、ペットボトルの底に合わせて切るか、余っているホイルを他端で処理して下さい。他端で処理した場合は、底の部分が平らになるように、床などに軽く叩きつけておきましょう。
ペットボトル容器の完成
最後に、切り口を処理ましょう。この作業は、家庭にお子さんがおられたり、栽培する人がお子さんである場合で大丈夫です。カットした部分をろうそくやライターなどの火で軽く炙り丸くする。この作業を行う場合は、火傷などに十分注意して行って下さい。
もし、火気を取り扱うのが難しい場合は、切り口に覆いかぶせるようにビニールテープを巻いても大丈夫です。
※使用するペットボトルの大きさは、500mlのものでも2lのものでも、育てたい植物に合わせた大きさで大丈夫です。
水耕栽培の流れ
ここからは、ペットボトルでの水耕栽培の流れを紹介します。種蒔きから定植までには、2種類の方法があります。1つは、ポットで苗を育ててから定植する方法と、水耕栽培用の鉢部分に、直蒔きする方法です。
定植までのポイントとしては、『種蒔き→育苗→根を洗う→鉢に移植→容器にセット』の順番です。この流れは、どの野菜に置いても有効なので覚えておくといいでしょう。
ポットで育てる
催芽まき
催芽まきとは、種から発根したことを確認してから種蒔きする方法で、発芽率が高くなることと、発芽までの時短になるというメリットがあります。
熱湯などで殺菌した蓋付きの容器に、養液か水を含ませたキッチンペーパーを敷き種をいくつか置きます。その後、乾燥しないように容器にフタをして、暖かい場所で管理します。
種蒔きと育苗
発根した種を砂で育てます。砂は、使用する前に天日干しして乾かしておきましょう。園芸用のポットの底にキッチンペーパーや半分に切ったお茶パックなどを敷き、乾いた砂を入れ、発根した種を3~5粒ほど植えます。
種を植える前に、砂に植える分の窪みを作り、種を押し込まないようにそっと置いて、種が隠れるように砂を被せます。ポットを受け皿に置き、そこに養液を注ぎ入れて育てるので、砂を入れた段階で、ポットを受け皿に置いてから、種を植えても良いでしょう。
砂の場合、受け皿に入れた養液を吸い上げてくれるので、直接ポットに水や養液をかけることはしません。むしろ、種が浮き上がってしまうので、ポット内に直接養液を与えないで下さい。
しばらくすると、発芽し双葉が出てきます。発芽後も苗に直接養液を与えるのではなく、砂が乾いてきたら、受け皿いっぱいに養液を注いて育苗します。根っこがポットの底から出てくるまで、そのままの状態で育苗して下さい。
根っこを洗う
根っこがポットの底から出るまで育ったら、鉢へ移植します。移植する前には、必ず根っこを洗って下さい。ポットから苗を出す前に、水を張った大きめのバケツを用意し、苗をポットごと傾けてバケツに沈めます。
その後、株元を優しく支えながら砂ごと苗を引き抜きます。ポットの穴から、砂を指で押すと抜けます。砂が抜けにくい時には、ポットを軽く揉むことで砂が崩れて抜けやすくなります。ポットから抜けたら、苗を軽く揺すって砂を全部落とし、根っこが乾く前に鉢へ移植します。
鉢に移植して容器にセット
ペットボトルで作った容器の鉢の部分に水耕栽培用のスポンジやハイドロボール、パームピートなどを入れます。これらは、苗を安定させるために使います。今回は、パームピートを使用した方法を紹介します。
パームピートは、使用する前に一度水を含ませ絞っておきましょう。湿らせたパームピートを鉢の縦半分ほどまで入れ、根っこが鉢の底から出るように苗を置きます。
苗の位置が決まったら、鉢を持ち上げ、残りの半分にパームピートを入れ、苗がぐらぐらしないように、軽く押し込めて下さい。鉢を持ち上げる時は、穴からパームピートがこぼれないように、指で根っこを挟んで穴を塞いで下さい。養液を入れる容器に付けた線まで養液を入れたら、鉢をセットします。
毎日の世話として、養液が少なくなったら補充して下さい。ただ、ずっと補充のみを繰り返すと、濃度や成分のバランスが異常を起こすので、1ヶ月に1回、ペットボトル内の養液を全て交換して下さい。また、鉢のパームピートが乾いた時は、霧吹きなどで真水をスプレーして湿らせましょう。
※市販されている苗を水耕栽培で使用する場合は、③番の『根っこを洗う』行程からはじめて下さい。この場合、バケツに溜めた水ですすぐだけでは、土が綺麗に落ちないので、ホースの散水ノズルを使って洗うときれいに落ちます。
ノズルの「ストレート」と「キリ」の間(水を手に当てた時、チリチリと水滴が当たる感覚が強い状態)でノズルを止め、水流はやや強めで根っこの下から土を吹き飛ばすように洗い流して下さい。
直蒔き栽培
直蒔きの場合は、ポットでの育苗や移植の手間がないので、早めに収穫する水菜やクレソン、葉大根などの葉野菜の栽培に適しています。
催芽蒔きの行程
ポットで育てる場合と同じです。
種蒔きと育苗
ペットボトル容器の鉢を受け皿に入れ、水で湿らせたパームピートを鉢に入れる。この時、パームピートを軽く押し込めて入れて下さい。パームピートを入れ終わったら、窪みを作り①の種をそっと置いて上からパームピートを被せて、馴染むように軽く押さえ、受け皿に養液を入れます。
受け皿の養液が少なくなったら追加しながら、苗が生長するのを待ちます。苗がある程度大きくなったら、元気なものを1本残し、間引きして下さい。残した1本の苗の根っこが、鉢底から出てきたら、水耕栽培用の容器に移して下さい。
ペットボトル水耕栽培におすすめの野菜7選
イタリアンパセリ
イタリア料理にか欠かすことの出来ない香味野菜で、肉料理や魚料理、ソースのアクセントにピッタリの野菜です。不足しがちなビタミンA,B,Cや鉄分、カルシウムが豊富で、しかも、収穫後には、冷凍保存ができるすぐれもの。夏場など日光に長い時間当たると、葉っぱが硬くなってしまうため、半日陰において管理して下さい。
イタリアンパセリは発芽率が低く、発芽してからも、およそ2ヶ月間は生長がゆっくりなので、収穫までに4ヶ月ほどかかってしまうため、早く収穫したい人は、ホームセンターなどで販売されている苗を購入することをお勧めします。
- 発芽適温・・・18度~25度(発芽まで10日ほどかかります)
- 栽培適温・・・18度(25度以上の気温では、徒長します)
クレソン
一度食べると、ハマることの多いクレソンは、半水生で水耕栽培と相性が良い野菜です。水分さえあれば、茎からあっという間に根っこが出てきます。ただ、水温が高くなると苗が弱ってしまうので、特に夏場には注意が必要です。
クレソンに含まれる「シングリン」という成分によって、消化促進や食欲増進、血液の酸化防止に効果があるといわれています。また、ビタミンやミネラル、ビタミンCなどが多く含まれています。
発芽適温は、23℃~30℃で、栽培適温は20℃程ですが、耐寒性もあるため、氷点下近くまで寒くなっても、すぐに枯れることはないようです。
春菊
鍋料理に欠かすことが出来ない春菊は、ビタミンB群やC、ミネラルや食物繊維が豊富に含まれています。特にβカロチンは、ほうれん草や小松菜よりも豊富に含まれています。
耐寒性があり、育てやすい野菜ですが、夏場の暑さにはそれほど強くないため日よけが必要です。春菊の栄養が最も豊富で一番美味しくなる旬は、晩秋から冬にかけての寒い時期です。
発芽適温、栽培適温ともに15℃~20℃で、耐寒性が強いため、氷点下でも耐えることが出来ますが、暑さに弱い部分があるため、気温が27℃を超える様な我所であh、生育が止まってしまいます。
シソ
シソといえば、有名なのは葉っぱですが、実は、花や芽、実や未熟果も美味しく食べることが出来ます。さらに、栄養素が豊富で、なかでもβカロチンが多く含まれています。
さらに、ペリルアルデヒドという成分には、いを健康にする作用があります。また、強い防腐作用もあるため、食中毒の予防にもなります。
いい事づくしのシソですが、長期的に栽培すると、味が落ちてしまうので、収穫後は、一旦栽培を終了して、改めて若い苗から育てたほうが良いでしょう。発芽適温は、22℃~23℃で、栽培適温は20℃です。寒さには弱く、気温が15℃を下回るような場所では、苗が弱るので注意が必要です。
チンゲン菜
中国野菜であるチンゲン菜は、今では日本の食卓でも当たり前のように出されるようになりましたよね。チンゲン菜は漢方として、「熱冷まし・胸焼け・胃のむかつき」に良いとされています。また、ミネラルもたっぷりで、炒め物や汁物、煮込み料理など、どの様な料理でも使うことが出来ます。
チンゲン菜は、育てている間ほとんど手がかからず、とても育てやすい野菜で、種を植えてから収穫までの期間も短いので、あっという間に収穫することが出来ます。発芽適温は15℃~35℃、栽培適温は、15℃~25℃とされています。
ネギ(九条細ネギ)
魚や肉の臭みを取るために使ったり、薬味として使ったり、何かと重宝するネギもペットボトルで水耕栽培することが出来ます。九条細ネギは、通常のネギよりも柔らかいので、育てている間に、葉っぱを傷つけてしまわないように注意してくださいね。
九条細ネギは、冷えた体を温めてくれ、ネギの青い部分は、カロテンを含むため、消化吸収を助けてくれます。発芽適温は15℃~25℃で、栽培することが20℃です。収穫する時は、株元から5cm程残して収穫すると、そこから再び生長するため、再収穫することが出来ますよ。
玉ねぎ
各家庭の冷蔵庫に、常備野菜として置いてあることも多い玉ねぎも、ペットボトルの水耕栽培で育てることが出来ます。もちろん、収穫もできますよ。
玉ねぎは、野菜の中でも一番に糖質が多く、炒めるれば炒めるほど甘みが増すのはそのためです。玉ねぎに含まれる硫化アリルは、体内にビタミンBを長く留めるため、疲労回復に大きな役割を果たしてくれます。
また、コレステロール値を抑える成分も多く含んでいるため、血液をサラサラにする効果があるとも言われています。
発芽適温は18℃ですが、4℃~30℃の間であれば、発芽が可能です。栽培適温は、15℃~25℃です。また、ある程度の耐寒性と耐暑性があるため、5℃~35℃の温度であれば、苗が弱ることなく栽培することが出来ます。
ただ、凍結には弱いので、冬場は、氷点下を下回らないような場所へ移動して管理したほうが良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?今回は、水耕栽培で野菜を作る方法を紹介しました。水耕栽培であれば、それほど病害虫の心配がないので、より気軽に作れると思います。ぜひ食卓を自分が作った野菜で彩ってみませんか?