暑い夏にぴったりの爽やかなレモンは、絞ってジュースにしたり、料理に使ったりと幅広く活用できるすぐれものですよね。レモンを料理で使うときは、お店で買う人が多いと思いますが、実は、家庭でも栽培することができることを知っていますか?家庭で出来るレモンの栽培方法を紹介します。
レモンの種類
一口にレモンといっても、実は、いくつかの品種があり、皆さんがよく知る酸味の強い種類や酸味の弱い種類、よく見かけるレモンよりも、形が丸いものなど様々です。
①リスボンレモン
出典:https://item.rakuten.co.jp/green-very/y-kkrmrb/
皆さんが『レモン』と聞いてイメージする味のレモンは、このリスボンレモンが多いと思います。栽培は比較的簡単ですが、アメリカ・カリフォルニア州が産地であることから、寒さには弱く、寒冷地で育てる場合は、冬場の防寒が必要になってきます。
日光から果実を守るため葉っぱは肉厚で、トゲも多くあります。純粋レモン種で下で紹介するユーレカに次いで、商業的に人気が高い品種でもあります。
②ユーレカ
出典:http://www.hiraokanouen.com/?pid=64071345
こちらも純粋レモン種で、果実は、リスボンレモンとよく似た酸味の強い風味です。トゲは、リスボンよりも少なめですが、リスボンに比べると、耐寒性が弱いため、より冬場の気温管理には注意が必要となります。
ユーレカには、枝変わりの「アレンユーレカ」と「クックユーレカ」という品種もあります。
③マイヤー
出典:http://higashikishu-kousya.blog.jp/archives/3276015.html
リスボンやユーレカに比べると、酸味は控えめで、オレンジとレモンを掛け合わえて作った品種といわれています。
とても育てやすく、実の付きも良い品種でトゲもなく、レモンの中では耐寒性もあるため、初めてレモンを育てる人にもおすすめです。
④サイパンレモン
出典:http://reform.apple-h.co.jp/blog/2016/01/post-9.html
別名を「菊池レモン」や「島レモン」ともいうマイヤーレモンの系統です。北マリアナ諸島から小笠原諸島に入ってきた品種で、一般的なレモンよりも果実が大きく丸みを帯びていますが、鉢植えで育てると、実は小さくなってしまいます。
この品種は、比較的栽培が簡単であるため、初めて食物を育てる人にもおすすめです。この他にも、「姫レモン・スイートレモネード」などの品種があります。また、よく見かけるライムもレモンの種類の1つなんですよ。
家庭菜園でのレモンの植え付けの手順は?
レモンの木を育てる場合、苗木を購入して育てるのが一般的ですが、レモンは、発芽率が高いため、例えば、市販のレモンの実から取った種を植えても発芽します。
その場合、果肉と種の表面に付着しているヌメリをしっかり取り除きましょう。その後、種をまく数日前に、水を張った容器につけてから蒔くことで、80%以上の確率で発芽します。
レモンから採取した種を使用する場合、「ぷっくりした種で水に沈むもの」を選んで植えてくださいね。細くて水に浮くような軽い種だと、発芽しない可能性が高いです。
とはいえ、初めて植物を育てる人には、やはり苗を植え付けたほうが簡単で、植え付けの適期としては、3月中旬から6月中旬頃です。種まきの場合は、3月頃に開始したほうがいいでしょう。
準備する物
- レモンの苗木もしくは種
- 植木鉢(苗木から育てる場合は、苗木より一回り大きなものを用意しましょう。種から育てる場合は、小さな鉢で大丈夫です)
- 果樹用の培養土
- 鉢の底に敷く軽石やネット
- 支柱
必要な用具が揃ったら、植え付けていきましょう。鉢の中に、鉢底ネットと鉢底石を敷きます。(もしくは鉢底ネットのみでも構いません)敷き終わったら、培養土を1/3ほど入れ、中央に苗木を置きましょう。
苗木の位置が決まったら、周りに残りの土を入れます。鉢底から水が染み出すくらいたっぷり与え、苗がぐらついていないかチェックして、ぐらついた時は、更に土を入れ固定してください。苗がぐらつかなくなったら、植え付け作業は完了です。
種植えの場合は、鉢底石やネットを敷いた後、鉢の縁から3cmほど下まで土を入れ、中央部分に種を植えて、土を上からかぶせたら、水が染み出るくらいたっぷり与えてください。
植え付けが終わったら、レモンが強風によって倒れたり、折れたりしないように、なるべく支柱を立てたり、鉢が倒れないように壁際に鉢を寄せたりして対策しましょう。支柱を立てる時は、苗の横に立てるようにしてください。
家庭菜園でのレモンの育て方
置き場所
レモンは、15℃~20℃が生長の適温で、冬場でも温暖で日当たりと水はけが良い環境を好みます。
この環境さえ整えられれば、ベランダなどで栽培することが出来ます。冬には、窓際の日当たりの良い室内に移動させて管理してください。霜が降りない温暖な地域であれば、南側の暖かい場所であれば、屋外でも育てることが可能です。
ただ、その場合、11月下旬頃からは、夕方以降は、蓋付きのダンボールなどでしっかり囲って寒さから守るようにしてください。
水やり
種から育てる場合、発芽するまでは毎日欠かさず水やりするようにしてください。芽が出てきたら、土の表面が乾いてきたら、乾き切る前に鉢底から流れ出るまでたっぷりと水を与えてください。
苗が育ち、結実して果実が大きくなる6月~8月にかけては、今までよりも水分を多く欲するので、水切れしないように特にたっぷりと水やりしてください。
ただ、レモンは、細かい根をびっしりと出す性質があるため、感想にも過湿にも弱く、土の水はけが悪かったり、休眠期である冬場に、水をやりすぎてしまうと、根腐れを起こしてしまうので、注意が必要です。
肥料
柑橘類の植物は、肥料をよく吸収するため、良い実をつけたい時には、肥料は必ず与えるようにしましょう。鉢植えで育てる場合は、12月~1月と開花時期にあたる5月~6月、成長具合によって9月頃にも肥料を与えます。
冬場と開花時期に与える肥料は、固形の油かすや化学肥料を与え、9月になると、苗の成長具合によって同じ肥料を与えてください。特に、開花時期にあたる5月~6月に与える肥料は、その後の身の付き方にも大きく影響を与えるので、肥料が切れないように気をつけましょう。
この時期に、葉っぱが黄色くなったり落葉し始めた場合は、肥料が切れてきた可能性があるので、すぐに液体肥料を与えてください。もし、症状がそれほどひどくない場合は、9月(もしくは12月)にやや多めに肥料を与えるのでも構いません。
植え替え
鉢植えで植物を育てる場合、年数が経つと鉢の中が根っこで一杯になって、根詰まりを起こして生長不良などの原因になるので、数年に1回鉢を一回り大きいものに植え替える必要があります。
レモンの場合は、2~3年に1度のペースで植え替えを行います。植え替えに最適な時期としては、4月~6月ですが、霜が降りない温暖な地域であれば、9月~10月の植え替えも可能です。
作業手順や準備物としては、苗を植え付けた時と殆ど同じですが、鉢を一回り大きいものを用意することとと、最初に鉢から苗を土ごと引き抜いて、根っこをほぐしたり、傷んで色が悪くなっている根っこを切り取るといった作業が必要になります。
レモンの剪定とその方法は?
植物を育てる場合、剪定という作業が必要になってきます。植物が成長する中で、枝が伸びすぎたり、内側に向かって伸びたり枝同士が絡み合ったりすると、風通しが悪くなり、病害虫が発生しやすくなります。
そうならないためにも、枝や葉っぱを切り落とすこと(剪定)で、枝同士の間隔を空けて風通しを良くし、病害虫による被害を抑えます。また、剪定して枝葉を少なくすることで、養分が植物に行き渡りやすくなるので、果実などの生長を促すことも出来ます。
レモンの剪定の適期としては、芽吹く前の3月~4月で、1年に1回程度行います。ただ、初めてレモンの木を育てる人は、5月中旬ころに剪定をしたほうがいいでしょう。
レモンは、春に伸びた枝の先に、花芽を付ける習性があります。しかし、剪定のときにその枝先を切り落としてしまうと、花が咲かないため、実がなることもありません。レモンの剪定では、いかに不要なもののみ切り落とし、剪定しない枝を上手に残せるかがポイントとなってきます。
そのため、慣れないうちは、春になり花が蕾を持ってから剪定をする事で、どこを残してどこを切ればいいのかが、わかりやすくなります。
ここで注意しなければいけないのが、剪定を開始するのは、発芽してから3年を経過してからということです。それ以前の若い苗木は、剪定せずに生長させてください。
3年目になった苗木からは、剪定してください。レモンの木の場合、「文様木風」の仕立て方が適しています。「文様木風」というのは、中心となる幹から出ている枝、3本をメインとして仕立てる方法です。
発芽後3年目の木の剪定は、植えている鉢と同じ高さを残し、上部を切り落としてください。翌年と翌々年(4~5年目)は、前年の剪定以降(前年の夏)に伸びた枝の3本の先端から、3~4枚の葉っぱがついている位置まで切り落としてください。
このとき、枝が3本以上ある場合は、上部な3本を残し、残りは枝の付け根から切り落としましょう。
それ以降は、年に一度春先又は夏に、幹の内側に向かって伸びている枝や伸びすぎてしまった枝を切り落とし、植物の風通しが良くなるように剪定してください。
家庭菜園でレモンの収穫時期は?
レモンの収穫時期は、花が咲き終わってから6ヶ月ころになりますから、花が5月~6月にかけて咲いたのであれば、収穫のタイミングは10月~12月頃となります。
レモンがしっかりと黄色くなるまで木においておくと、香りが弱くなったり、果汁が少なくなったりすることがあるので、色づき始めたら収穫をして、その後室内で追熟させておくと、ちょうどいい状態でレモンを楽しむことが出来ますよ。
レモンの実は、残しておくとその後実が付きにくくなるので、必ずすべての実を収穫するようにしてください。また、果実の収穫は、遅くても2月の上旬までには全て収穫し終えるようにしましょう。
と、収穫のことについて書きましたが、実は、苗がだいたい5年ほど経ったものでないと、レモンの良い果実を収穫することが出来ません。
とはいっても、3年目までの苗であっても実が成ることはないわけではありませんが、苗木が大きくなっていないと、味がイマイチだったりするので、少なくても5年ほどは、苗木を大きくすることを優先させるようにしてください。
もし、そんなに待てない!!という人は、苗を購入する段階で、4年ほど経った苗木を選んで定植すれば、次の年には、レモンの収穫を楽しむことが出来ると思います。
レモンの摘果(てきか)の方法は?
レモンの場合、春に咲いた花が果実になったものを冬に収穫するというのが、一般的ですが、実をつけすぎてしまうと、植物自体が疲れてしまって、十分に栄養が行き渡らず生長不良担ってしまうことがあるので、夏や秋に実をつけたときには、実が小さいうちに摘み取ってしまう、摘果という作業が必要になります。
特に、一本の枝にいくつも実を付けている場合は、葉っぱの数に合わせて、1~2個の残して摘果してください。目安としては、葉っぱが30~40枚に対して果実が1個の割合です。
果実がもったいないからと摘果しないでおくと、植物自体が弱ってしまうので、必ずこの割合を守るようにしてください。また、花は、秋頃にも咲き、実を付けることがありますが、それらも摘み取るようにしましょう。
レモンの果実ができないときの対処法は?
花が咲いたのに結実しない場合、その理由として以下のことが挙げられます。
①苗木がまだ若くて、花や実をたくさんつける時期ではない
上でも書いたとおり、良いレモンの実を収穫するまでには、発芽してから5年ほどかかります。
しかし、発芽から時間が経っていないと、まだ花や実を多く付けるまで木が育っていない可能性があります。その場合は、時期が来るまで栽培を続けてください。
②肥料切れをしている
柑橘類が結実するには、沢山の肥料が必要となります。しかし、肥料が足りないと、例えば花が咲いても、実が上手く育たないことがあります。
葉っぱの色が変色して肥料切れの症状が見られたら、即効性がある液体肥料を与え、しっかりと栄養が行き届くようにしましょう。
③水切れをしている
レモンの栽培には、肥料の他に水やりも重要です。水切れを起こしてしまうと、やはり果実ができないことがあります。
そんな場合は、水やりの水分量や水遣りをする間隔などが適切かどうかを見直し、水分量が少ない場合が少ないようなら、水切れしないような水やりの仕方に修正しましょう。
④病害虫による被害がある
果実がつかない場合に考えられる時、最も厄介な理由が病害虫による被害によるものです。場合によっては、手遅れになってしまう場合もあります。
病害虫の被害を受けないためには、風通しを良くしたり、毎日こまめに全体をチェックしたりして、管理することが重要です。
⑤横枝が少ない(剪定していない)
レモンの種類によっては、初期に木が縦方向に大きくなりやすい等特徴を持つものがあります。しかし、縦方向に木や枝が伸びてしまうと、果実を沢山収穫することが難しくなってしまいます。
3~4本の主枝を枝の根元から放射状に伸ばして、それを均一な太さに育つように『開放形』になるように、剪定しましょう。
⑥花が多い
咲いている花が多いと、レモンの木が吸収した養分の多くが、その花に回ってしまい、結実しても見が育たないということが出てきます。
そうならないためには、だいたい葉っぱが15枚に対して花が1つという割合に絞り、それ以外のものは、摘み取ってしまいましょう。また、花も5月までに咲いたもののみと決めておき、それ以降についた蕾も摘み取るようにしましょう。
⑦受粉が失敗している
レモンは、通常自然受粉する植物ですが、室内でレモンの木を栽培している場合、受粉を媒介してくれる昆虫がいなかったり、屋外で吹く強い風も起こらないため、受粉を失敗してしまうことがあります。
もし、室内で栽培していて果実ができない場合や、確実に結実させたい場合は、筆などを用いて人工受粉をすることをおすすめします。
レモンの気をつけたい病害虫
①アゲハ蝶の幼虫
レモンの木にとって、最も厄介な害虫がアゲハ蝶の幼虫です。蝶々の幼虫となると、駆除するのに躊躇してしまいそうですが、アゲハ蝶の幼虫がレモンの木にいると、葉っぱを食い尽くし、枝を枯らしてしまったり、果実ができない原因になってしまうので、なるべく孵化する前に、卵を見つけ取り除くようにしましょう。
ちなみに、アゲハ蝶の卵は、1ミリほどの黄色い粒のような形をしており、新葉に産み付けていることが多いです。
②カミキリムシの幼虫
こちらも、アゲハ蝶の幼虫同様、注意が必要な害虫で、カミキリムシの幼虫によって、木が瀕死状態になってしまうことも多いです。
カミキリムシの場合は、土の上(根元)から5~10cmほど上の幹に穴を開けて、卵を産み付けていることが多いので、幹に見かけない穴が空いているのを見つけた時は、早めに捕殺しましょう。
③カイガラムシ
カイガラムシには、沢山の種類があるのですが、その中でも白くてふわふわした外見のカイガラムシは、寄生すると手作業での除去が難しく、だからといって放って置くとあっという間に木が弱って死んでしまいます。
また、カイガラムシの排泄物によって、すす病を誘発してしまうことも多くあります。カイガラムシを発生させないために、木の風通しを良くしたり、鉢自体を風通しが良い場所に置いて、日陰や湿気の多い箇所を作らないようにすることです。
④そうか病
そうか病というのは、カビ菌の一種で、この病気を発症すると、葉っぱに白い斑点が出来て、果実には、淡い褐色の斑点ができます。それらの斑点は、時間が経つと突出してきます。
そうか病は、雨が多く降り多湿な状態が続くと、発病しやすくなるので、特に梅雨時期には、湿度が高くなりすぎないように、風通しが良く、採光の良い場所に鉢を移すなどしましょう。また窒素肥料を多く与えすぎることによっても、発病しやすくなるので、窒素肥料は、与えすぎないように気をつけてください。
まとめ
いかがでしたか?他の観葉植物や果物の木から比べると、レモンを結実して収穫するためには、多少お世話が大変なような気がします。でも、それだけ手間ひまをかけた木から収穫したレモンの味は、格別なものとなるでしょう。
また、葉っぱの深い緑にところどころに見られるレモン色の果実のコントラストは、インテリア性も十分兼ね備えていると思います。ぜひレモンの栽培に挑戦してみませんか?