インテリアに観葉植物を取り入れたいけど、衛生面や手入れが心配という人におすすめなのが『ハイドロカルチャー』です。ハイドロカルチャーという言葉を知った人にも、分かりやすいようにハイドロカルチャーで観葉植物を育てるためのポイントを詳しく紹介します。
観葉植物のハイドロカルチャーとは?
そもそも、ハイドロカルチャーとは何なのでしょうか?ハイドロとはギリシャ語で「水」を意味し、カルチャーは英語で「栽培・耕作」を意味しています。その2つの言葉を組み合わせた造語です。
ハイドロカルチャーとは、植物を栽培するのに、土を使う代わりに、人口園芸用の石を使って植物を育てる水耕栽培の事です。土を使わない水耕栽培というと、球根を育てる時に用いられる水栽培もあるため、混同されることも多いですが、水栽培は、水だけで植物を育てるのに対し、ハイドロカルチャーによる水耕栽培は、水に肥料や土の代わりとなる土壌を使うという大きな違いがあります。
この違いが、ハイドロカルチャーの大きな特徴でもあります。人口園芸用の石には、ハイドロコーン(ハイドロボール)やカラーサンドなどがあります。ハイドロコーン(ハイドロボール)と言うのは、発泡煉石というもので、観葉植物の根っこから出る酸を吸収する働きがあります。
カラーサンドとは、名前の通り色がついた砂の事で、カラーサンドをハイドロカルチャーで使うと、よりアーティスティックに観葉植物を楽しむことが出来ます。
ハイドロカルチャーのメリットとデメリットは?
メリット
清潔
ハイドロカルチャーで使うハイドロコーンは、基本的に無菌で清潔であるため、病害虫がほどんど寄ってきません。そのため、それらによって室内が汚れることはなく、しかも、土特有の匂いといったものもないため、匂いを気にすることなく室内で観葉植物を育てることが出来ます。
水の管理がしやすい
植物を育てる時、気をつけなければいけないことの1つに水やりがあります。水を与えすぎれば、根腐れを起こし、水が少なすぎれば水分不足によって枯れてしまいます。
その点、ハイドロカルチャーは、容器にガラスなどの透明なものを使うことが出来るので、水の残量を目で確かめることが出来るため、根腐れや水分不足を心配することが少なくなります。
また、時期や植物の種類によって多少変わってきますが、水やりの頻度も、1週間に1回程度で、それほど頻繁に水やりをする必要がありません。
インテリア性が高い
観葉植物を飾りたい場所に合わせて、それに合った容器を選んで使うことが出来るうえ、人口園芸用の石も、粒の大きさや色、質感など種類が豊富にあるため、それらの使用方法によって、見た目がカラフルで、まるでアートのようなハイドロカルチャーを楽しむことが出来ます。
このように大きなメリットがあるハイドロカルチャーですが、もちろんデメリットも存在します。
デメリット
根腐れを起こしやすい
ハイドロカルチャーで観葉植物を育てる場合、一番気をつけなければいけないのが、根腐れです。ハイドロカルチャーでは、底穴がない容器を使用します。
透明な容器では容器内の水の量が見えるとは言え、鉢植えの水やりのように、底から水が出てきたらOKというように、その水分量をチェックできるわけではないので、水やりの際の水の量を把握するまで、水分量と根腐れには気をつけなければいけません。
また、容器内の水の量が少なめだったとしても、蒸発してきた水によって根っこ全体が蒸れると、やはり根腐れを起こす原因となってしまいます。植物によって異なりますが、容器内の水が完全になくなった後、1~3日ほど置いてから水やりするといいでしょう。
生長が緩やかで大きく育たない
ハイドロカルチャーで育てる場合、大きく育つことが出来ないので、生長を楽しむことは殆どできません。鉢植えで観葉植物を楽しむ場合、その楽しみの1つとして、観葉植物の生長がありますが、ハイドロカルチャーの場合は、土によって行われている様々な作業(微生物による老廃物の分解や循環)を薬剤などによって処理しているため、土栽培の様に大きく生長することがあまりありません。
また、水の中で育てる不自然さによって、慣れないうちは、温度管理や肥料の加減が難しいという一面もあります。
情報量が少ない
人気が出てきたハイドロカルチャーによる観葉植物の栽培ですが、やはり、土栽培によるものからすると、その情報量は圧倒的に少なく、観葉植物に何か問題が発生したときに、その対処に困ることもあります。
土栽培の場合であれば、問題に関してちょっと調べると、すぐにその解決策を探し出せる事から、本当に初めて観葉植物を育てるという人には、ハイドロカルチャーより鉢植えによる土栽培を勧める場合もあるようです。
ハイドロカルチャーを作るのに必要なものは?
ハイドロカルチャーで観葉植物を育てるには、以下のものが必要となります。
根の生えた好みの観葉植物
育てたいと思う観葉植物を水挿しなどによって発根させたものを使います。
市販された土植えの観葉植物を使用することも出来ますが、土植えされていたものをハイドロカルチャーで育てた場合、植物の状態によってはすぐに枯れてしまうことがあるので、あまりお薦めはできません。
底穴が空いていない容器
底穴が空いていなければ、ガラスのコップや器、マグカップやお洒落なビンなど、素材も形も自分の好きな容器を使って構いません。ただ、初めてハイドロカルチャーに挑戦する人は、水の残量が分かりやすいので、透明な容器のほうが良いでしょう。
人口園芸用の石(ハイドロコーン・カラーサンドなど)
ハイドロコーンやカラーサンドなどの園芸用の石は、観葉植物を支える役割を果たします。カラーサンドを使用するとおしゃれに仕上がりますが、るうえ、おしゃれに仕上げるには多少手間がかかるうえ、技術とセンスを問われるので、まずは、ハイドロコーンから始めてみると良いでしょう。
ハイドロコーンの粒には様々な大きさがあるので、植物の大きさによって粒の大きさを替えましょう。あえて粒の違う2種類のハイドロコーンを容器に入れることで、ハイドロコーンだけでもオシャレに仕上げることが出来ますよ。
水耕栽培用の液体肥料又はイオン交換樹脂栄養剤
本来植物は土から栄養を吸収しますが、ハイドロコーンには、栄養が含まれないため、ハイドロカルチャーで育てる場合、これらの肥料成分を混ぜることで植物に栄養を与えます。
根腐れ防止剤
水を循環させることが出来ないハイドロカルチャーでの栽培には、無くてはならないアイテムです。観葉植物からの老廃物を吸着させ、根っこを腐らせないようにする働きをします。
ハイドロカルチャーの作り方
必要なものが揃ったら、いよいよハイドロカルチャーへ観葉植物を植えましょう。手順は、以下の通りです。
事前準備
使用するハイドロコーンは、事前に水洗いし、汚れを落としておきましょう。
①根腐れ防止剤を容器の底に敷く
防止剤の量としては、底がしっかり隠れるくらいの量です。それより少ないと、水が腐りやすく、根腐れを起こしやすくなってしまいます。
②ハイドロコーンを入れる
事前に水洗いしておいたハイドロコーンを容器の1/4~1/3ほど入れます。イオン交換樹脂栄養剤を利用する場合は、この時点でハイドロコーンの上に適量ふりかけて下さい。
※液体肥料を使用する場合は、イオン交換樹脂栄養剤の使用は必要ありません。
③高さを調節
バランスや向きを確認しながら容器に植物を入れ、位置を決めたら、ハイドロコーンを少しずつ入れ高さを調節する。この時、容器の側面に根っこが当たらないように気をつけましょう。
④植物がぐらつかないようにする
観葉植物の周りにも、ハイドロコーンを敷き詰め、植物がぐらつかないようにする。この時、根っこの隙間にも入るように、ピンセットなどで軽く突いたり、植物を軽く揺すったりしながら入れていきましょう。
⑤水を入れる
ハイドロコーンを入れ終わったら、容器の1/5~1/4ほど水を入れましょう。液体肥料を使用する場合は、この時水に溶かして与えてください。ここまでの作業で植え替えは終了です。植え替えが終わったら、明るい日陰で管理しましょう。
観葉植物のハイドロカルチャーでの育て方
水やり
容器内の底まで水がなくなった後、1~3日経ってから水を与えます。与える水の量としては、ハイドロコーンの大体1/5ほどの高さまでです。
水が無くなる前に継ぎ足してしまうと、根腐れの原因になったりカビが生えたりする原因になります。必ず水が全部なくなってから新しい水を与えましょう。また、与える水を15℃くらいの常温の水にすると、観葉植物への負担が軽くなります。
肥料
肥料は、観葉植物を植えた後、根っこがある程度定着する2~3週間経過したあたりからハイドロカルチャー用の液体肥料を与え始めます。ただ、イオン交換樹脂栄養剤を使用した場合は、基本的には追肥を気にしなくても大丈夫です。
というもの、イオン交換樹脂栄養剤には、肥料となる栄養素を排出しながら水を浄化する効果があるからです。ただ、その効果は、大体3ヶ月ほどでなくなるので、3ヶ月過ぎた頃に、もう一度上からまけるタイプのイオン交換樹脂栄養剤を使用するか、液体肥料を与えるかした方がいいでしょう。
どちらを使用するにしても、肥料を与える際には、表記に合わせた用量を与え、根っこが肥料焼けしないように気をつけましょう。
置き場所
観葉植物によって明るい日陰や日陰など、その明るさは多少変わってくると思いますが、直射日光が強すぎる場所に置くことは避けましょう。日光によって葉焼けしてしまうのはもちろんのこと、容器内の水が熱されて根っこが蒸れやすくなったり、苔や藻が生えやすくなったりします。
植え替え
ハイドロカルチャーの場合、鉢植えで行うような意味合いでの植え替えはありませんが、使用しているハイドロコーンの洗浄と根腐れ防止剤の入れ替えを目的とした植え替えが必要です。回数的には、半年から1年に1回の割合ですから、鉢植えより頻繁に行わなくてはいけませんね。
容器に入っているハイドロコーンや植物など全て取り出した後、ハイドロコーンを水洗いし、乾燥させている間に、根っこの汚れたり腐ったりしている箇所をハサミで切り落とします。
その後の手順としては、上に紹介したハイドロカルチャーの作業手順とほぼ同じです。この時、容器内も汚れているようなら水洗いしておくと良いでしょう。また、1年経っていなかったとしても、ハイドロコーンに苔や青のろが発生した場合は、見た目が悪くなるので、水洗いした方がいいでしょう。
根腐れを起こさない方法
ハイドロカルチャーでの栽培で失敗してしまう多くの原因は、根腐れによるものです。その原因としては、2つ考えられます。1つ目が、水の与え過ぎによる酸素不足によるもの。もう一つが、根っこから排出される老廃物が蓄積によるものです。
根腐れを起こすと、水を吸い上げられず、根元に近い葉っぱから枯れ始めたり、腐った根っこから異臭が放たれたりします。そうならないためのポイントは2つ。「水を与えるタイミングは、容器内の水が乾いた数日後」と「根っこから排出される有害な分泌物を蓄積しない事」です。
ハイドロカルチャーは、水耕栽培ではありますが、根っこが常に水に浸かった状態になると、酸素の供給ができず根腐れを起こしてしまいます。ハイドロカルチャーの場合、観葉植物の根っこは、容器内の水がなくなったタイミングで、ハイドロコーンの間に溜まっている酸素を吸います。
その後、新たに水を与えることにより、古い空気が押し出され、新鮮な空気が送り込まれるというサイクルがあります。それなのに、容器内の水が完全に乾きいる前に水を与えてしまうと、そのサイクルが乱れ、植物は空気を吸えなくなって、結果、根腐れへとつながってしまいます。
ですから、絶対に容器内に水がない状態を数日作る必要があるのです。有害な分泌物というのは、観葉植物の根っこから排出される老廃物のことです。上述していますが、土栽培の場合、根っこから排出されたその分泌物は、土の中にいる微生物によって分解されますが、ハイドロコーンには、微生物が存在しないため、分解されることなく永遠に蓄積されていきます。
そうならないように、微生物の代用として根腐れ防止剤を入れます。この防止剤の効果は、半年から1年で薄れてしまうので、植替えをする時に必ず防止剤のも入れ替えましょう。
ハイドロカルチャーにおすすめの観葉植物の種類
ポトス
ツル性の観葉植物として、あまりにも有名なポトス。育て方が比較的簡単であることから、初めて観葉植物を育てるという人にも定番の植物です。
ポトスには、葉色が鮮やかな黄緑の品種や深い緑色をしている品種、白い斑の模様が入った品種などがあります。
アイビー
こちらも、ツル性の有名な観葉植物の1つです。アイビーも育てやすいことから、初めて観葉植物を育てる人たちに人気があります。アイビーの特徴は、特徴のある可愛らしい葉っぱです。品種によっては、白い斑の入ったものや黄緑やグレーなどの斑がマーブル模様に入ったものがあります。
モンステラ
大きく切れ込みが入った特徴のある葉っぱが、アロハシャツのデザインにもよく使われているモンステラは、エキゾチックで南国気分を味わえる観葉植物です。中でも、ヒメモンステラという品種は、小型なので、インテリアグリーンとして扱いやすい観葉植物です。
パキラ
こちらも育てやすい観葉植物として、初めて観葉植物を育てる人に人気の植物です。100円ショップなどでも販売されており、手軽に手に入るのも魅力の一つといえるでしょう。
ガジュマル
幹が特徴的で個性的なガジュマルは、「幸せを呼ぶ木」として人気がある観葉植物です。特徴ある幹は、一つ一つ形が違うので、購入するときには、選ぶ楽しさもあります。個性的な佇まいには、愛着が湧いてきますよね。
アボカド
アボカドも観葉植物として育てることが出来ます。しかも、生育が旺盛なので、料理で使用したアボカドの種からでも、育てると芽を出しぐんぐんと生長していきます。種から育てたアボカドをお洒落なハイドロカルチャーで飾ると、愛おしさもひとしおかもしれませんね。
まとめ
今人気のハイドロカルチャーについて、手順などを紹介しました。自分の好きな容器を使ってお気に入りの観葉植物を楽しめる所が良いですよね。
しかも、カラーサンドなどを使うことで、オシャレでアーティスティックに仕立てることが出来るため、自分なりの楽しみ方が出来るのも魅力の1つだと思います。自分好みの楽しみ方でオシャレに観葉植物を演出してみてくださいね。